13
「っああああああああああああああああああああああああああああ!!」
一瞬曇天のように曇った蒼銀が、次の瞬間には先程の焔に負けず劣らずの深紅に染まる。フリーズの制止も振り切って片腕にシャルを抱いたままセイレーンを持ち大蜘蛛に突っ込んでいく。
「セイレーン!!『ソード』!!!!」
彼岸花にも酷似した瞳は怒りを湛えてる。何に対しての怒りなのかファイ自身にも理解できなかった。
只無謀にも突っ込んで行って相手に8本の足があるのを失念していた。一本をよけてももう一本が背後からファイを襲う。だが構わなかった。
肩の肉をそがれてもファイは止まることなく突進していく。閃光にも似た一閃が足を切り落とす。
ごぼりと口から血が溢れる。どうでもよかった。ザビィが遠くで怒鳴っている。ウルガが何か叫んでローランも何か言っていた。只フリーズの声だけがしないなとぼんやり思った。喋っている内容はどうでもいい。只、目の前の敵を
(殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!!!)
ファイは気が付かなかった。今の自分の顔を。そして自分が人間のような感情で動いていることを。
ぱたりと 水滴が地面に落ちた。
[ 121/164 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]