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「ファイ・・・?」
「っ危ない!!」
シャルが、フリーズを突き飛ばす。胸から何かが突き出して。
その下にいたファイはもろにそこから噴出した物をかぶった。
飛沫した 紅い血を
時が 止まった気がした
「っシャルううううううううううううううう!!!」
ファイの口から絶叫が響く。出なかった声が出るときにはシャルは真っ赤になって倒れていた。シャルを貫いたのは家一件ほどの大きさの蜘蛛の前足だった。ずるりと引き抜かれたシャルはファイが受け止める。だくだくと流れる血は止まる気配がない。
硬直する中、ザビィが勢いよく走り出し大蜘蛛にとび蹴りを放つ。次いでウルガとローランも走り出す。シャルは任せた・・・背中はそう語っていた。
「シャル、シャル!!」
「ふぁ・・・い・・・よか・・た・・・」
自分が死に掛けているのにも関わらず、シャルは穏やかに笑っていた。
ファイは自分が焦げていようがもうどうでもよかった。ただ、パニックに陥って体が硬直して動かなかった。
突き飛ばされたフリーズも足が動かなかった。そんな恐慌状態の中で、頭の隅にわずかに残っていた理性は簡単に結論をたたき出した。
(助からない)
フリーズは自分の能力をよく知っていた。どの程度の傷が癒せ、どの程度が手遅れなのかよくわかっていた。
でも感情は理性を否定した−−−−−
「ファイ!!シャル君を、早く!!」
「あ、うあ・・・」
「ふぁ・・・い・・・」
フリーズに手渡そうと立ち上がろうとしたファイの服の裾をシャルが掴む。のろのろとファイの蒼銀の瞳がシャルの碧眼を捉えた。
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