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「っザビィ放せ!!ファイとシャル君が!!」
「馬鹿野郎!!お前まで心中する気か!!」
「死なないよ!!だから放せってば!!」
「死にに行くモンだろうが!落ち着け!!」
「うっさい!!行くったら行く!!!放せ馬鹿翠!!変態三つ編み!!」
「ひど!!」
「へ・・・へんた・・・!?」
「冷静になれ!シャル君はともかくファイがあれで死ぬわけがないだろう!!」
「じゃあ尚更−−−−−−−−−−−−!!」
押し問答を繰り返し一向に要領を得ない4人に冷気が吹き抜ける。何事だと見てみると、大きな青い蛇が焔を沈めていた。
其の蛇は大量の水と氷でできており、それが焔を消していく。
焔と水蛇の温度差に水蒸気があり得ない速さで雨雲となり、ざあああと雨が降り注ぐ。その下に、小さな天使が紅い髪の戦士を支えていた。
「しゃ・・・シャル君・・・?」
「何ぼーっとしてるんですか!!早くこっちに来てください!!」
凄い剣幕のシャルの一括に4人は慌てて駆け寄る。シャルの腕の中にいるファイは意識はあるものの、煤塗れだった。それだけならよかった。
煤塗れなだけならシャルも其処まで怒鳴ったりはしなかったろう。ファイは吐血していた。とめどなく溢れる血は、黒く焦げ付いている。
どうやら焔に焼かれたらしく、中がこげているのではないのかと言うのがシャルの見解だ。
「ファイ!?」
「・・・っ・・・」
気管支もやられたらしく、口を開けるものの声が出ない。蒼銀の瞳は必死さを湛え、口を開かせぱくぱくと訴えている。ファイの口はこう形作っていた。
『馬鹿野郎 早く逃げろ 後ろにいる』
それを、誰か一人でも理解していれば あんな事にはならなかった。
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