双神二重曲奏 | ナノ



9

ぐわりと、シャルの金髪を熱気が煽る。熱いと思う間すらなく、虫たちが一瞬にして灰と化す。其の灰すら、中を舞う中で欠片も残さず消滅した。
天を突くんじゃないかと思うくらいの紅蓮の焔が、シャルとフリーズたちをよけて虫たちのみを焼き殺す。其の焔の中心に、ファイはいた。

「・・・」

ひゅーひゅーと、半死人のするような呼吸音がシャルの耳を突く。それでもファイは止まることなく歩く。ふと、手を横に振ればそれに応じたように焔が大地を、天空を舐めた。
唖然としていたシャルは、ファイがセイレーンを持っていないことに気が付いた。そして、この焔が纏う神聖な力。

「・・・セイ・・・レーン?」

シャルがそう呟く。焔が、そうだと肯定するかのように更に燃え広がった。
それでも尚数が少なくならず、シャルの足元にまで虫が来る。それを一瞬で燃やしたファイは大地に両手を付いて、叫んだ。


「『鬼紅蓮』!!!」


それは、「諸刃の剣」と言う表現がぴったりだった。焔が一気に質量を増す。それは虫も焼いたがファイの体さえも蝕んでいた。
肉の焦げる嫌な匂いがシャルの鼻を付く。虫はもういない。しかし焔が消える気配もない。
ごうごうと燃え盛る焔の中でファイは膝を付いていた。動く気配は、ない。

「ファイ!」

シャルが焔に飛び込む。次いで、シールドを解除したフリーズも続こうとするがザビィとウルガ・ローランに羽交い絞めにされてしまう。



[ 117/164 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -