双神二重曲奏 | ナノ



8

右腕一本で大剣を振り回し、体内に入り込んだ虫を引きずりだして握りつぶす。ファイの体はあちこち切れていた。血が滴り、其処に虫が群がる。
ファイの血を最初に舐めた虫に異変が起きた。いきなり硬直したと思うと熔けていったのだ。それをみたファイは自分の頚動脈にセイレーンを押し当てる。

「ちょ、待て!!」

ザビィがファイのしようとしていることを察し、制止の声を上げたがそれより早くファイはセイレーンを引く。ぴっと言う音の一瞬後に血が噴出す。
辺りに赤が散った。それに黒が群がり絶命していく。血液の大元のファイに群がるものはシールドを飛び出したシャルによって切り裂かれる。
しかし、虫が減っていく事は無く二人が立てる場所はどんどん無くなってきていた。

「ばっか!戻って来いシャル!」
「ファイちゃん!!」

ウルガとザビィが叫ぶが、二人はどんどん遠のいていく。そしてシールドの中の彼らが見たものは。


襲われかけたシャルを突き飛ばし、自身が虫たちに飲まれていくファイの片腕だった。


ファイが呑まれていく様を、シャルは呆然と見ていた。じわりじわりと脳に恐怖と後悔がしみこんでいく。自責の念が恐怖を超越し、自覚するより早く体が動く。遠くでフリーズやザビィの制止の叫びが聞こえたが、知った事ではなかった。辛うじて飛び出していたファイの片腕を掴もうと手を伸ばす。

しかし、其の手が腕を掴む事はなかった。



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テーマ「人外ファンタジー」
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