双神二重曲奏 | ナノ



7

いつもはそこで光り輝いているはずの彼女は居らず、代わりにファイの衣装とは異なる黒がファイの皮膚から体内へ侵入していた所だった。
掻き毟ろうと右手を出すがすでに中に入り込んでいる奴にその爪は届かない。皮膚と筋肉と骨と血管の間を滑るように移動している感覚が襲う。気に入った部位でもあったのだろう。二の腕に激痛が走る。

「いっ!!」

あまりの痛さにファイは思わず短く悲鳴を上げる。そして持ってきていた剣で二の腕に進入し食事を始めた奴を貫きその傷口から引きずり出した。
まだ生きているらしく、気持ち悪く蠢くそれを焼き殺した。
筋肉と筋をやられたらしい、左腕が動かない。

「っああくそ、セイレーン・・・!」

どこかで落としたのかとすばやく視線を動かす。と視界の隅に銀色に光る腕輪を見つける。

ファイは何のためらいも無く飛び込んだ。

「ファイ!!」

そのファイの手を掴もうとシャルが手を伸ばす。しかしそれは虚しく空を切っただけだった。
体制を崩しかけたシャルを掴み自分の方へ引き寄せると、フリーズは頑強なシールドを張った。数匹入り込んでいたが、それは踏み潰したり斬り飛ばして対処した。シールドの外のファイは自分の体内へ入ろうとする虫を引き剥がしセイレーンを手に取った。

「セイレーン『クレイモア』!!」

黒に埋もれそうになったファイを、白銀の光が吹き飛ばす。継いで発生した剣圧で吹き飛ばされる。


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