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そんな野郎共(おい)に目もくれず、先頭を走るシャルは混乱していた。と言うのもフリーズも知らなかったこの生き物のことを彼は知っていた。
(っなんで・・・)
困惑気味のシャルの表情を、隣で走っていたファイが見止める。疲れたと思ったのか、シャルの腕を引っ張り自分の背中に背負う。
「っわ!?」
「疲れたんだろ?ちょっと乗っとけ」
「そ、そうじゃないんです!疲れてないから下ろしてっ・・・!」
「無理、今下ろしてたら俺らあいつらの胃袋の中だぜ」
それを言われ、言葉に詰まったシャルを背負ったままファイは走る。どうしたと、理由を尋ねるのは忘れない。
「・・・あの魔物・・・いえ、神獣は・・・」
「神獣?あれが?」
ポツリとつぶやかれたシャルの一言にフリーズとザビィも聞き耳を立てる。
「といっても魔神のペットに近いんですが・・・」
「あれペット!?悪趣味にも程があんだろ!」
「気持ち悪!!」
ザビィとファイが同時に悪態を付く。そんな二人を放っておき、フリーズは無言で続きを促す。
「あれは本来地獄に落ちた生者を喰らうために魔神のお堀に溜まってるはずなんです。地上にいるなんてことは考えられない」
「・・・神獣って・・・・・・・」
「もし堕ちた生者が悪人なら、その悪行を喰らい天へ返すんです。善人が落ちてしまえば肉を食われるんですが・・・それでも魔神が命じない限り動かない」
「魔神が命じた・・・ってこと?」
「そこまでは分かりません。でも彼女は冥界の管轄のはずだから地上への進軍は認められていない」
そこまで言い切るのを待っていたかの様に、冥界の使者たちがファイたちの進行方向からも現れる。前も後ろも完全にふさがれてしまった。
しかし、黙って話を聞いていたファイは背中のシャルを下ろすと問答無用で炎を浴びせ、強行突破を試みた。
「冥界のペットだかなんだか知らねえが邪魔だ!!退きやがれ!」
蒼炎がこげた道を作り上げる。がそれはたった一瞬のことだった。
ファイが作り上げた道はすぐに黒で埋まってしまう。盛大に舌打ちしたファイはセイレーンを呼び起こそうと左手を見た。が。
「っ!?」
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