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「っなんだありゃあ!!」
「俺が知ってるわけないでしょ!?あんなのどの文献にも載ってない!!」
フリーズに背負われているウルガは背面から追ってくる黒い軍団をみて叫ぶが、叫びたかったのはウルガだけではなくフリーズも同じだった。負けじと叫びかえす。と言うか、究極の虫嫌いであるウルガは奴らを見た瞬間意識を飛ばしかけたので、今度は叫んで意識を繋ぎとめておきたかっただけなのだが。
そんなやり取りをしている二人を尻目に、ローランを背負っていたザビィはこんな状況にも関わらず、空気をあえて読まないような思考をめぐらせていた。いや、空気を読んだら読んだで失禁しそうなこの状況でその思考回路はあながち間違いではないのだが。
(こいつ・・・あの中放り込んでやろうか)
自分に背負われているのにさっさと走れやらどんくさいやら毒付いているローランを餌に逃げてしまおうかと本気で考えていた。
「貴様食われたいのか!すぐ後ろにいるぞ!!」
「・・・」
「聞いているのか!?」
「・・・おい」
「あ?」
「落とすぞ」
「!!」
どすの利いた声にようやく自分の置かれている状況を理解したらしい、ローランは押し黙る。しかし理解はしたが納得できないようでぎりぎりと歯軋りが聞こえた。耳元で聞こえるそれに、最初は無視していたが、ローラン限定で短気なザビィは切れそうになる。
「・・・マジで落とされたいか」
ゆるく手を離しかける。ようやく止まった音に、ザビィは走る速度を上げた。こいつ絶対殺してやると再び誓って。
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