双神二重曲奏 | ナノ



4

さて外に出ようとしたとき。
ガシャンと、何かが割れる音が響く。それはファイの部屋からだった。

「っファイ・・・また窓から出ようとして硝子割ったな・・・」

ローランが頭を抱える。ファイの常識のはずれた行動に常に振り回されている彼だ。今回もそれだと思ったらしい、呆れから来る溜め息を止められなかった。しかし。

どたどたどた・・・と騒がしく部屋の中から音がしたと思ったら、其処から剣を引っさげたファイがドアを蹴破り飛び出してきた。フリーズの選んだ服のままだったため、其の姿を一回も見ていなかったローランとザビィは驚きとは別の意味で硬直する。
しかし、それが驚愕に変わったのはすぐだった。

「てめえらぼけっとしてねえでさっさと外に出やがれ!!」

ファイの鋭い声が5人の耳朶を打つ。ファイの後ろからぞろぞろと虫とも小動物とも付かない奇妙な黒い生き物が追ってきたのだ。

「!!!」

すぐさま反応したのはシャルだ。けが人のローランを支え、突っ立っていたウルガを引っ張りザビィとフリーズに叫んだ。

「ザビィさんフリーズさん!!早く!!」

其の声に反応した二人はシャルの手からひったくるようにローランとウルガを抱え、外へ飛び出す。最期にファイが、連中に一炎浴びせて飛び出す。
外は外で、とんでもない有様だった。
町の家という家は先程の生き物が蠢いており、其の生き物が建築物を片っ端からかじっていたのだ。しかし彼らがかじっていた・・・基喰らっていたのは建築物だけではなかった。

「ぎゃあああああ!!」
「!?」

突如響いた悲鳴に一同が一斉に振り返る。見なくていいものを見てしまった。
町の住人を逃していた兵士の一人が諸手を上げる。其の腕から黒い体が皮膚から体内に侵入して行ったのだ。それを引き金に、兵士の体に群がり体の内から喰らい尽くされたのだ。後には、血の滴る骨だけが残った。

「・・・っ逃げろ!!」

さすがのファイもフリーズの声に反応して駆け出す。全員吐いてしまいたいと思っていたのだが、そんなことをしていればあの兵士の二の舞になるのは火を見るよりも明らかだ。



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