8
「ファイ遅いな・・・」
いつまでたっても部屋から出てこない自分の主と師に少しじれてきたシャルは扉をノックしようと手を上げる。それと同時に目の前の扉が開きファイが出てきたので、慌てて手を引っ込めた。
と、ファイの顔色が悪い事に気が付いた。
「ファイ、どうしたんですか?嫌なこと・・・あったんですか?」
「・・・」
暗い顔でぼんやりとしたファイに一抹の不安を覚えたシャルは、きゅっとファイの手を握る。
「!・・・ああ、シャルか」
「どうしたんですか?ぼんやりして・・・まさか何か悪い事でも・・・」
「あ、いや、そんなんじゃねえよ・・・そんなんじゃ・・・」
そこまで言いかけて、ファイはその場にずるずると座り込んでしまった。シャルがどうしたんですか、大丈夫ですかと声をかけていたが総て耳から抜けていた。
頭が痛い。目の前が暗い。何も聴きたくない。考えたくない。
それ以前に、目の前の弟子に、宿で待っている彼らにどう事実を伝えろと言うのだ。
(俺が・・・狭者で神で・・・お前らの運命を狂わすなんて・・・どうやって・・・・!)
どうしようもない不安に、吐き気がした。
[ 108/164 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]