双神二重曲奏 | ナノ



5

聞き慣れない単語にファイは無言で続きを促す。エイルカリアは意を決して自らの知る真実を告げる。

「『忘却するもの』セイレーンは…グランド様の右腕から作られた・・・いえ、生まれました」
「どういうことだ?ということはグランド隻腕だったのか」
「いえ、そういう意味ではありません。・・・グランド様の御身体は焔でした」
「・・・?」

意味を飲み込めず、とにかく続きをと無言で催促するファイの眼を受け止め、エイルカリアは言葉を続ける。

「普通、生き物と言うのはいくつもの化学物質で構成され、其処に少量の世界の理を織り交ぜて形作られています」
「理・・・火、水、風、木、土だな」
「後は極少数・・・光、闇、空間、時もそれに入ります。化学構成は違いますが魔力を構成する其の理の部分は基本的にどの種族も一緒です」
「つまり、グランドはその化学構成部分が焔だった・・・と?」
「はい。彼女が焔の戦女神と呼ばれる由縁です。どうして彼女がそのような御身体になられたのか・・・今になっては誰にも分かりません。しかし先の大戦時、彼女がセイレーンを振るった時確かに両腕あったとされています」

ファイは目を見開いた。話があまりに浮世離れした(まあ自分もなのだが)話に、開いた口がふさがらない。
そんなファイにエイルカリアは私も知ったときは驚きましたといって話を続ける。

「そう・・・あなたが今考えている通り、グランド様は質量保存の法則を無視した方でした。そうした特異体質も手伝って、彼女は本来ありえない御身体であられました」
「全理の共生か・・・?馬鹿な、いくらなんでもそれは信じられん」
「信じられないもの無理はありません。其の上グランド様は左腕でもう一つ神器をお作りになっておいででした。『記憶するもの』グライアンドです。」

ファイがとうとう絶句する。それでもエイルカリアは話を止めようとはしない。あなたが聞きたいとおっしゃったのでしょうと、態度で表すかのように。



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