双神二重曲奏 | ナノ



4

連れて行かれたエイルカリアの私室は、広いのだが絢爛豪華な謁見の間よりもあっさりした感じだった。生活感もなく、あっさりと言うより淡白に近い。

自分の兵士に下がる様命じ、ファイに座る様勧める。ファイは大人しく従った。
エイルカリアは小さな机を挟んで反対側の椅子に腰掛ける。

「移動させてしまって申し訳ありません」
「構わない。…本題に入らせて頂いて良いだろうか」
「ええ」

エイルカリアがしっかりと頷いたのを見てファイは口を開く。

「……あんたはシャルにセイレーンの所持者は数千年振りだと言ったそうだな」
「…はい」
「そしてこいつは他の種族…人間や精霊達も知っているくらい有名な神器だ」
「その通りです」
「だったらおかしくないか?あんたら神がどうかは知らん、只人間も知っているなら種族はどうあれ必ず誰かが欲し手に入れる筈だ。扱えたのは確かに俺とグランドだけだろう。じゃあその後数千年の間、こいつは誰が持っていた?」
「…っ」

エイルカリアの美しい顔が歪む。ファイは更に追い詰める様に問い質す。

「はっきり言う、俺の考えは……セイレーンが適応者以外の者を食らっていたんじゃないのか?」
「………そ、れは……」
「俺は…これをある奴から譲り受けた。そいつは生きているが記憶がない……セイレーンはなんだ?」

一息にそう言ってしまってからファイは口を閉じる。痛いほどの沈黙が続き、やはり答えられないかとファイが口を開き掛けた。しかしファイよりも先にエイルカリアが口を開く。か弱いほど細い声が沈黙を破った。

「…セイレーンは…『忘却するもの』、記憶を喰らうものです」
「…?」



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