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「…それを聞いてどうするのですか?」
「どうこう云々の話じゃない。…只、引っ掛かる」
「何がですの?」
「…言ってもいいのか?あんたも困るが…親しくなった者に迷惑は掛けたくない」
ファイは一言ずつ言葉を選び、エイルカリアを刺激しない様気をつけながら発言する。エイルカリアは暫く沈黙していた。そして厳かに兵士達に命令を言い渡す。
「……この方を、私の私室に。くれぐれもご無礼のないように」
「っ陛下!?」
近衛兵の悲鳴の様な非難の声を笑って黙らせ、シャルに向き直る。
「シャル、貴方もここでお待ちなさい」
「な…何故ですか?」
「私はファイと大切なお話が御座います。貴方には関係のない事ですから暫くで良いのです、少し席を外してください」
「でもっ…ファイは僕の師ですよ!?無関係だから下がれと言われて下がれません!!」
躍起になって食って掛かるシャルにエイルカリアは困惑した。半分感情が暴走しているシャルを止めたのは、それまで黙っていたファイだった。
「シャル、聞き分けろ」
「でもっ…!」
「確かにお前は俺の弟子だ。でもそれ以前にお前の立場はなんだ?」
「ぁ…」
「…あんまりエイルを困らせるな。大事で大好きな主なんだろ」
ファイは軟らかく諭す。いつもなら殴っていただろう場面で、ファイは自分の立場を唐突に理解した気がした。
「…何、俺の勝手な思い違いだ、お前が気に掛けるもんでもねぇ。だからここは聞き分けろ。…いいな?」
「…はい」
不承不承と言った体でシャルが引き下がる。ファイは悪いなとシャルの頭を撫でて自分を案内する様指示された兵士について行った。
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