双神二重曲奏 | ナノ



1

伝承は不確かで 例えそれが事実でも 信じられるものは多くない



「ファイこっちです」

一方、ファイはシャルに連れられて天界の一画にあるエイルカリアの宮殿に来ていた。天界と言ってもそこまで来るのは結構簡単なのだ。
問題は、宮殿のなかにある謁見の間まで行く事で。
途方もなく広い宮殿に一人で入ろうものなら間違なく迷うくらい広い。シャルは慣れているため迷う事なく歩を進めるがファイはおぼつかない足取りだ。

「ムダに広いな」
「まあ宮殿とか自分のものは力を見せ占める為に少しでも豪華な方が良いんですよ。じゃないと馬鹿にされたりしますから」
「…なんか人間みたいだな」

意地汚い貴族みたいだとファイは思った。
今まで何度か雇われた事があったがその全てが嫌味で意地の張った連中ばかりだった。
そんなどうでもいい事を考えていたファイにシャルは着きましたよと歩みを止めた。
巨大な扉が音も立てずに開く。謁見の間は思ったよりも広かった。
その一番奥に玉座があり、そこには美しい女性が佇んでいた。
神に人間年齢が当てはまるかどうかは知らないが、見た限りでは二十歳位に見える。床に付きそうな位長い真直ぐな金髪は朝日の様に眩く、麗美な顔を飾るのは銀色の双眸だ。女性は立ち上がり優雅に頭を下げる。

「ようこそお越し下さいました。私がこの宮殿の主、エイルカリア=ニーノ=フェニカと申します」
「ファイ…ファイアースティレット=ライア=ヴァルキュリアだ」

一応真名をなのり、一礼する。フリーズに教わった付け焼き刃のそれは見るに堪えないとまでは行かないが、物凄く陳腐なものに見える。
しかしエイルカリアは笑う事なく切実に受け止める。

「ご丁寧な挨拶、嬉しく思います、ファイアースティレット様」
「いや、ファイで構わない。長ったらしいのは嫌いなんだ」

いつも通りのぞんざいな喋り方にエイルカリアの側近は敵意に近い感情をファイに向ける。しかし逆にエイルカリアはファイのざっくばらんな話し方が気に入ったらしい。表情を和らげる。



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