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「こんなもんか?」
「もっとなんかつけよう」
その後そのままの格好で宿に帰ったフリーズとファイはファイの服の変貌振りに固ったウルガに髪を整えて貰ったいた。
顔に似合わず細かい作業が得意なウルガはファイのやたら長い髪を器用に結い上げる。
こちらもフリーズの着せ替え人形と同様に髪型を変えるのが楽しくなって来たらしい。とことん追求していった。
最初は見ていただけだったフリーズも興味を持ったらしく、一緒になっていじっている。
すると何処からもってきたのか、シャルが色とりどりの髪止めや髪飾りを大量にもってきたのだ。
そして当のファイは、やはり寝ていた。
「よっしゃ、これで合うだろ」
ウルガが一仕事終えたと言わんばかりに手を払う。
今のファイは男らしさのかけらもない。シャルが持って来たケースの中にチークやファンデーションと言ったコスメの類もあったため少し化粧も入っている。
どうやらフリーズ・ウルガ・シャルの渾身の合作に眠気が吹き飛んだらしい、ファイは鏡を見てしきりに感心している。
「すっげぇ…お前ら本当に器用だよな」
「久々に力入れちまった」
「なんか楽しかったよね」
フリーズがにこやかにそう言うとシャルははいと頷きぱたぱたと翼をはためかせる。
「ファイ、とっても素敵です!」
「いや、やり上げたのはお前らだよ。ほんと対してもんだ」
いつものポニーテールから一転、両サイドの髪だけを後ろに持って行き、ゆったりとしたお団子にしている。下の方はこてで巻いており、不快にならない程度に髪飾りがあしらわれている。
ストレートだったせいで攻撃的な外見だったらしく、カールしてしまえばふんわりとした印象が際立つ。
「しっかし面白いな、髪と服変えるだけで此所まで変わるとは」
「まぁファイが元々美人だし…」
言ってしまってからフリーズは赤面し俯いた。
ウルガとシャルも視界の端で自分の失言に固っている。どうかファイだけは固っていません様にと顔を上げた。
あ、ウルガとシャルが固っていたのは自分のせいじゃないと分かったのはその瞬間だった。
ファイも、フリーズに負けず劣らず赤くなっていたからだ。
格好が格好なだけに物凄く初初しい。
それを理解するや否やフリーズの心臓は狂ったようにばくばくと鼓動が止まらなくなってしまった。
「…お、俺そろそろ行くわ。」
ファイは赤い顔で固ったままのシャルを引きずり部屋をでていった。
「あ、うん……」
半ば夢うつつにそう返したフリーズをじいっと見ていたウルガは声に出さずに呟いた。
「………ザビィご愁傷様」
今何処かに出かけていていないザビィに合掌した。
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