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一方、街に引っ張り出されたファイは困惑していた。
「おい…何処行くんだよ」
「服屋さん」
「はぁ?」
何故服屋等に行かなくては行かなくてはいけないのかファイには皆目検討がつかない。
只ズルズルとフリーズに引っ張られるままに足を進めた。
暫く歩いて、漸くついた服屋にて。
フリーズが手にしている服を見て、ファイはしかめっ面をする。
「…このままでいいんじゃないか?」
「駄目」
「女見たいな格好しねぇぞ」
「駄目」
「そしてこれはお前の趣味か」
ファイが顔をしかめたまま指差した服は、俗に言う甘ロリと呼ばれるものだ。
レースがふんだんにあしらわれた桜色のそれは見ていて不快になるほどファイに似合わなかった。
「いや、女の子って可愛い色好きでしょ?」
「俺をその他大勢の女共と一緒にするのが間違いだと思うぞ」
そう言えば似合わないよねと何気に酷い事を呟いてフリーズはまた別にの服を見漁る。めぼしいものを見つけてはファイに合せて、気に食わなかったら元の位置に戻す。
フリーズはどんどん楽しくなって来たらしい、あれはこれはとファイを着せ替え人形宜しく着せ替えていく。一方のファイは半分寝ていた。
しばらくそんな事を繰り返していたフリーズは飽きたらしい、一着選んで直立不動で器用に寝ているファイを起こし、自分が持っていたそれをファイに手渡す。
「これ、ちょっと着て見て」
「ぅおう」
妙な返事を返しファイがその服を簡易な造りの試着室持って行きもそもそと着替える。
暫くしてファイがその服を着て出て来た。
フリーズが選んだのは修道女の様な黒い服だ。スカートの裾がゆったりと広がったそれは膝より少し上位の丈だ。肩の辺りが少し詰まっているが、手首の方もスカートの裾同様に広がっている。
フリーズは少し崩れているそれを整えてやる。
「髪の毛は後で整えるから」
そう言ってフリーズは服の会計に行ってしまった。
残されたファイはじいっと自分の格好に見入って思った。
(…何気にお揃いだな)
恐らく選んだ本人は意識等全くしていないだろうがと、少し頬を緩めた。
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