双神二重曲奏 | ナノ



2

「なるほどな、その凄いなんとかが俺に是非会いたいと」

フリーズが『鳳凰神』と『フェニカ』のことを掻い摘まんでファイに教えた所、やはり恐らく、と言うか絶対話を聞いていなかった様な返事を返した。

「……ファイ、人の話をちゃんと聞きなさい」
「聞いていた。只興味がないから覚えていないだけで」

踏ん反り返って威張るファイに、額を押さえるフリーズに変わってウルガがげんなりと聞く。

「お前いつ行くんだ?」
「俺が知るかよ。大体人呼ぶならちゃんと時間位指定しろっての」
「……………お前がそれを言うか」

昔散々ファイに遅刻されるわ勝手に集合時間変えられるわ挙句の果てにドタキャンされるわと振り回されたザビィは、うっかりファイをお前呼ばわして呟いた。
しかしそれが聞こえていたらしい、ファイから強烈な肘撃ちをプレゼントされる。
それは見事にみぞおちにヒットした。
余りの痛さに床の上で蹲り、腹を抱えて悶絶しているザビィを無視してファイはいってくると【セイレーン】を身に着けて部屋を出ようとした。
と、フリーズはそのファイの腕をガシッと掴み、じろりと見た。

「…なんだよ?」
「ファイこそその格好で女神のお目にかかる気?」
「…そうだけど」
「ばかっ!!」

フリーズ曰く馬鹿なその格好とは、いつもの肩のむき出しの戦闘服の事だ。
うっすら埃を被っているし、所々ほつれている。ボロボロと言う表現がぴったりだ。

「もうちょっとちゃんとしたのないの?」
「ない」
「一着もないのか?」
「ないったらない」
「変えは?」
「同じやつだけ」

分かっていた。分かっていたが、此所まで女っ気が無いとファイが本当に女かどうかさえ疑わしい。
一瞬沈黙したフリーズはファイの手を半ば強引に引いて部屋を出た。




ばたんと乱暴に閉められたドアを呆然と見ていたウルガは開いた口が塞がらず、唖然と呟いた。

「……青筋立ってたな、あいつ」
「全面的にキレてる。………ひじょーに珍しく」

軽く青褪めながらザビィが言葉を返す。
フリーズがあそこまでキレるのは相当珍しい。
反対を言えば、その珍しい状態にいとも容易く持って行けるファイは殊更珍しい…と言うか凄いのだが。




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