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新たな出会いは新たな別れの前兆とはよく言うものだ
「お前の女神様が呼んでる?」
ファイがそう口を開いたのは、ザビィとシャルに叩き起こされた日の昼過ぎだった。
「はい。なんでも大切なお話があるそうです。お好きな時間にいらっしゃいと」
シャルは姿勢良く椅子に座ってこくりと頷く。
ファイは訝しげに首を傾げた。
「なんで俺が」
「そこ迄はまだ分からないんです。只、数千年振りの『セイレーン』所持者ならば一度は顔を見ておきたいと」
「……俺は珍獣か」
ファイは顔を渋らせる。
そんな会話を聞いていたフリーズは、ふと思い出した様にシャルに疑問を投げ掛けた。
「そう言えば、シャル君のお仕えしているって言う女神様ってどんな方なんだい?」
「あ、そう言えばまだ皆さんにはお話していませんでしたね」
シャルはなんでも無さそうにさらりと言った。
「僕の主はエイルカリア=ニーノ=フェニカ様です」
余りにさらりと言ったため、ふーんといった感じの空気が流れかけ…………
「「「っえぇぇぇぇぇ!!!?」」」
フリーズは持っていた本を取り落としザビィは飲んでいた紅茶でむせ返りウルガはベットからずり落ちそうになった。
その三者三様の驚き方に『エイルカリア=ニーノ=フェニカ』について何も知らないファイは三人に対して驚いた。
「あ…あの…俺の記憶が正しければ…………その女神って………!」
「はい、エイルカリア様は『鳳凰神』で、現『神王』の妻、つまり現『覇神』の妹君であらせられます」
シャルがほんの少しだけ自慢げに翼をはためかせる。そんな彼にウルガは若干震える声で問い掛ける。
「しかも…『フェニカ』って言やあ…『鳳凰神』一族最高の一家じゃねえか…」
「ご本人は大した事無いとおっしゃってました」
「大したことありまくりだっつーの!!」
のほほんとした様子でクッキーを囓っているシャルにザビィが全力で否定する。
四人のやり取りを見ていたファイは首を傾げて眉間に皺を寄せた。
「…一体何が凄いんだ?」
全く話を聞いていなかったであろう台詞に四人は何も言わずに盛大な溜息をついた。
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