6
ウルガの寝ている部屋に控え目なノックの音が響く。
「はい?」
「ウルガ…起きたか?」
ドアを少し開けて顔を覗かせたのはファイだった。
「…ううん、まだ」
「……そうか」
ファイはそう言って、部屋に置いてある小さな椅子をフリーズの隣りに持って行き、腰掛ける。
「…どうした」
「え?」
「邪神戦からお前ろくに寝て無いみたいだが」
「!」
フリーズは落としていた視線を上げる。ファイの蒼銀の目とぶつかった。
「俺の思い違いならいい。ただ、無理はすんな」
「…」
ファイの言葉がじわりとフリーズの胸を温かくさせる。
「悩みがあるなら聞くだけ聞いてやる」
「…」
今までかけらもみせたことの無かったファイの優しさの片鱗が、自分に向いている。
それだけで現金な位幸せに感じるのは、自分の幸せのレベルが低いからだろうか。
とくんとくんと心地よいテンポで音打つ心臓とその音に合せて来る穏やかな感情に安心したのだろう。溜まっていた疲労が睡魔となってフリーズを眠りに誘う。
こくこくと船を漕ぎだしたフリーズをファイは抱き寄せ自分の肩口に頭を乗せてやる。
「肩貸してやるから寝とけ。いざって時に動けねぇのは困る」
最後の方はぶっきらぼうに言い捨てていたがフリーズはそんなことを気にする間も無く眠りについた。
(……全く、人前で仲良くしてんじゃねえよ)
何処か幸せそうに眠っているフリーズに気を遣って起きられないウルガは目を閉じたままひっそりと溜息をついた。
しかしその後いつも以上に元気一杯のシャルと全快したザビィによってうたた寝をしていたファイ諸共三人が叩き起こされたのは言うまでもないが。
[ 96/164 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]