双神二重曲奏 | ナノ



4

「シャル君申し訳ないがそこの書類を取って貰えないか?」
「これですか?」
「そう、ありがとう」

ローランはベットの上でシャルから書類を受け取り、内容を確認した後サインする。
そんな行動を彼此三時間はやっていた。しかしローランの周りには、未処理の書類が山の様に残っている。これはローランがさぼっていた訳ではない。
この仕事を始める一時間前に目が覚めたのだ。それまでは、眠っていた。



「ん…」

ローランが目を開けると、目の前にファイの顔があった。

「うわぁ!?」
「やっと起きたか」

間近に女性の顔があってびっくりしたローランにファイはテキパキと熱を計り脈を計りとした。

「全て正常値」
「ファイ…君は一体いつ看護士になったんだい?」

唖然と見上げるローランを無視し、ファイはフリーズとシャルの名前を呼んだ。
二人は直ぐに飛んで来る。

「ローランさん、どこか痛む所無いですか?」

とシャルが聞けば

「ローランさん、お腹とか空いてません?」

とフリーズが声を掛け

「ローラン、血が足りないかも、とかないか?そうかないか」

とファイが尊大な態度で言い捨てる。
一気に質問されたのと現状が理解できないのとでローランは一瞬眩暈を感じた。

「ちょ…っと、待ってくれ。一度に聞かれても答えられない」
「「「あ」」」

三人共口を開け固る。そしてファイ以外の二人はすみませんと顔を赤くして謝った。
そんな謙虚な二人などどうでもいいと言わんばかりにファイが口を開く。

「お前ずっと寝てたんだよ」
「何故?」
「何故って…その歳で惚けるなよ。それとも寝過ぎて脳味噌溶けたのか」

仮にも病人であるローランに対してファイは仁王立ちで腕を組み、容赦ない台詞を吐く。後ろでフリーズがファイの後頭部をいつの間に持っていたのか魔導書でぱこーんと叩き、シャルが申し訳無さそうに頭を下げていた。

「お前邪神に脇抉れたんだよ、内臓とか色々出てて治すの苦労したっつの」
「ファイは変に妨害してただけでしょ」
「手伝おうと思って針と糸と糸鋸と接着剤用意しただけだ!!」
「最後の二つが余計なの!大体、あれ接着剤じゃなくて木工用ボンドだったじゃないか!」
「フリーズさん、珍しく突っ込みずれてます。そこは普通『接着剤とか糸鋸とか持ってきて夏休みの自由工作かー!!』ですよ」

そんな三人のやり取りに、ローランは思った。

(俺…今ちゃんと人間の形してるのか?)

そら不安にもなるわな。



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