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出会ったのがいきなりだったのと同じで別れもいきなりだった。
しかしここでは普通のことで、でも「いきなり」物事が起こることに生き物はいつまでたってもなれることは無いのだ。
それは『ファイ』が流暢に喋ることが出来るようになってきたときに起きた。
『ファイ』は先日綺麗なものからもらった腕輪をして酷く機嫌がよかった。
灰色が反射して鈍く光っている。俗に言う銀色と言う色なのだが『ファイ』がそんなこと知るわけも無い。
全体に繊細な彫刻が施してあり、真ん中には二つのあかい石と少し大きめの石が付いていた。
綺麗なものの髪と同じ色をしているため、気に入ってた。
それが超一級品であることをこれは知らない。
(ちゃんとつけれたし・・・ほめてもらえるだろうか)
『ファイ』はいつものように綺麗なものの処に向かう。しかしそこに綺麗なものはいなかった。
「?」
おかしい、いつもなら『ファイ』が来る前にいるのに。いつもなら、いらっしゃいと言って笑ってくれるのに。
そんな思考にくれかけたそれの耳に聞き覚えのあるちいさな声が聞こえた。
「・・・あっちか?」
『ファイ』は声がしたほうに向かって走り出した。
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