5
フリーズが無機質なものに変わる。そんな彼をそっと大地に下ろすと、ファイはセイレーンを両手で持って前にだす。
静かに命じた。
「セイレーン『ヴェール』」
武器が一枚の長い羽衣に変わる。殆ど同時にフリーズが謳う。
『大地を統べるは竜の王 天空を統べるは鳥の王』
セイレーンがフリーズの声を受けて震える。ファイは添える様に謳い出す。フリーズが主旋律ならファイは伴奏、と言った所だろう。
『その理侵すもの 冥きもの』
とん、とファイが飛ぶ様に邪神へ向かう。
『!?』
邪神は反射的に手を出したがファイは難なくそれを躱す。
ヴェールの端を投げる。真直ぐに邪神へ向かって行き、邪神の左腕を斬り飛ばした。
『彼の者 世界を滅ぼす支配す者』
邪神の絶叫が響く。しかしフリーズは動じた様子もなく、只謳う。
『しかし彼の者 大地の怒りを受け 天空の恨みを買う』
ファイはフリーズの唄に合せて踊っていた。踊っているだけだった。しかし舞う度にセイレーンが邪神を切り裂き切断していく。
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