小説 | ナノ


これのその後/キルア視点/ちょっと猥褻

兄貴……あ、ぶたくんじゃない方ね、がずっと話していた名前という女が気になってしょうがなかった。
もともと兄貴はあまり喋らない方だが、学校のことはたまに話す。「参観日がいつで〜」とか「〜までにアレとアレが必要だから〜」とか、そういうことを話すついでに、ヒソカ(キ●ガイ)とかクロロ(可愛そうなやつ)とか名前(あほ)の話題が上がる。ほかのやつの名前をも他に出るけど、兄貴が小等部のことから話題に出すのはこの3人だったから、見たことはないが聞いたとおりになんとなくイメージしてまるで自分の友達のように感じていた。
兄貴が中等部に上がったあたりから、兄貴とヒソカとクロロは身長も態度もデカいしで有名だった。勿論そんな3人といつも一緒に居る名前も有名だったが、あまり学校に来ないみたいで(来たら来たで屋上とか保健室とかに籠っている)ので、見たことがあるやつは少ないらしい。
やつらが高等部に上がってからは名前も前よりは学校に来るようになった。らしい。兄貴がボヤいていた。それでも俺は名前という女を見たことがなかったし、兄貴に会わせろと言ってもなんだかんだではぐらかされてしまい俺が言葉に詰まるとこれみよがしにどうでもいいこと、例えば宿題やれよとかそんなことをまくし立てて俺を制圧して去っていく。そんなことを数回繰り返されれば意地でも名前を見たくなる。中学生の好奇心なめんな。
俺の苗字名前像はアホでぐうたらで全てがめんどくさい、そんな女なのになぜか兄貴にだけはちょっと尽くしている女。外見については兄貴は一切教えてくれなかったので勝手に想像していた。黒くて重たい前髪を揺らして目は開くのもだるそうな死んだ目でヤボったくかっちり制服を着ている女。そんで兄貴にパシられてる。うん、いい感じ。ウケる。
とか、思っていたのだが、名前はチョーいまどきのギャルだった。いや、なんだろう。ギャルになりそこねたっていうか、落ちぶれすぎては見えないというか。明るいチョコレートみたいな髪の毛は毛先だけ綺麗にMIX巻きにされていて制服のスカートは膝上10cmくらい。パンツ見えそう。化粧は濃いめだけどそれなりに美人だった。
弁当を忘れて財布も忘れたことにしてお金を借りる、という口実を作って高等部の後者へ潜入し、兄貴のクラスまで来た。来たはいいものの、兄貴と名前はいないとヒソカに言われた。ヒソカはたまに家に遊びに来るのでわかる。別に仲がいいわけじゃない。どこにいるかわかる?と聞けば購買じゃないかなと言われたのでここから一番近い購買まで行くことにした。購買までの廊下の窓から見えたベンチに黒髪ワンレンロングの男と図書館で手を振ってきたギャルがいた。なんか妙な組み合わせだなと思ったら兄貴だった。

「イル兄」
「……キルじゃん。どうしたの」
「ああ、イルミの弟だっけ。キミかわうぃ〜ね〜なんつってね」

最近よくテレビで見るチャラ眼鏡の真似をしたギャル。なんだこいつ・・・と思っていれば兄貴が「これが名前ね」と紹介してくれた。まじか。思ってたのとだいぶ違う。図書館の時のあいつかよ。すげえフランクなやつでなにも気にも留めない、みたいな。兄貴ともテキトーにつるんでいれそうなやつだった。俺がアセロラジュースまみれにしても更に兄貴が水浸しにしてもへらへら笑って許してくれるし、笑えばめちゃ可愛いし、まあ、いいやつ。びしょびしょになった制服を絞りながら校内に退散していく名前と兄貴を見送って俺はもはや誰もいないベンチに腰掛ける。ちょっと濡れてる。あ、金借りるの忘れてた。
廊下の所々濡れてるところを辿りながら屋上を目指す。
屋上までの最後の砦、アルミのドアに手をかけると、女の悲鳴が聞こえた。

「あっあっああっんっいる、イルミぃ…」

それが悲鳴じゃなくて喘ぎ声だと分かったのは、扉を少し開けてからだった。風呂上がりみたいに湿った女が寝てる兄貴に跨ってガクガク強請られていた。

「名前さぁ、こんなに具合よくなってどうすんの」
「あぁぁきもちっきもちいよぉっあっあっああ」
「聞いてないし」
「聞いてゆっきいて、るぅ!いっ、み、もっ、ともっと突いてっ」
「童貞ちんこ好きでしょ。キル見て興奮した?」
「してな、しなていよぉっあんっあっあ、あっ」

名前は真っ赤になった乳首を勃起させて濡れたブラウスの上から自分でひっかいてぐちゃぐちゃになっていた。兄貴は顔色も変えないでガツガツ腰を振っている。俺の名前が出た時に、ぶわっと耳が熱くなった。ど、しよ。勃起した。ガツンと音がしたと思ったらドアは閉まっていて、アルミの銀色しか見えなかった。はっとして走って、最寄りのトイレに駆け込んだ。
グチュグチュヌリュヌリュ
耳にまとわりつく、ねばっこい音が忘れられない。上ずった喘ぎ声。
俺が会いたかった名前という女は、どれが本物なのか。よくわからなかった。


20120710