小説 | ナノ


彼の白い肌に赤が垂れる。彼のすぅっと通った鼻から、赤が垂れる。

「クラピカ、鼻血」

教えてあげると、彼にはあまりにも似合わない乱暴な仕草で鼻の下を拭った。ぬらり。今度は彼の手の甲にも赤が咲いた。それを確認してからクラピカは「ほんとうだ」と間抜けな声をあげた。

「なぁんかクラピカに鼻血って、似合わないね」
「そうだろうか?殴られれば出るし蹴られても出るがな」
「そういうのじゃないよ」

未だに鼻の下を伝う血液を舌でなめたり、手の甲でぬぐったりするクラピカ。猫みたい。

「逆上せちゃったのかなあ?ここのところ暑いから」
「いや。心当たりならある」
「ぶつけた?」

「名前のことを考えていた」

しかも卑猥な。
クラピカでもそんなことってあるのね。私は聞かなかったふりをして、食べかけのアイスを口に含んだ。



20120628