小説 | ナノ


「今日海に行こう◇」

この変態のセリフが「今夜星を見に行こう」だとしたら、何か間違いを起こして付いて行ったかもしれない。BGMは君の知らない物語。イエァ。

「行くわけねーだろ。なんで変態と海なんか行かなきゃなんねーんだよ。大体何しに行くんだよ。海開きだってまだだよ。まだ6月だよバーカ」

クロロでも誘えばと言ったら既に断られたと返ってきた。あの「結局は口車に乗せられなあなあに付き合ってくれる男、クロロ」が断ったのだ。私はヒソカに飴ちゃんをあげた。最近アニメショップで買った、携帯獣の可愛い缶に入っているいちごミルク味の飴ちゃんだ。私もひとつ食べようとしたら防腐剤が詰って出てこなかったのでヒソカの口に入ってしまった飴ちゃんを取り返した。変態の味がする。

「名前のそういうところ嫌いじゃないよ」
「てめーのそういうところが嫌いだよ。あれ、イルミは?」

きょろきょろと見回すと教室にイルミはいなかった。むしろヒソカと私以外いない。どういうことだ。

「今日は休みだからねえ。イルミは家かも」
「え?ちょ、待てよ」
「なにそれキムタク?」
「違う違う。いや、え、なん?なん?今日休み?え?だって昨日の夜パリストン先生から電話きたんだけど」
「それはボクと名前は補習だから」
「はあああああああ!?聞いてねええええ」
「まともに言っても名前来ないでしょ」

ハメられた。パリストン、あのネズミ野郎、クソ、ハメられた。今日だって急遽席替えするよって、くじ引きで席替えするよって言うから、ちくしょう…

「ね、だから今日はボクと海に行こうか◇」

私は暫く悩んでコクリと一回縦に首を振った。腑に落ちない。


20120621