小説 | ナノ


私の前の席はクロロ・ルシルフルという男である。額には中学の時に彫った刺青が残っており、恥ずかしくなったのか高等部に上がってからは前髪で一生懸命隠している。彼は振り向くなり眉をしかめる。

「お前なにしてんだ」
「カードゲームのルール勉強中」

ジン先生が出張なので世界史は自習になった。世界史は大抵自習でウルトラハッピー。ジン先生でよかった。
自習なので心おきなくコンビニで箱買いしたカードのブースターパックをバリバリ開けられる。

「イルミの弟とバトルする約束したんだよね」
「へぇ。最近のカードは色々こまごました説明があってよくわからんな」
「まあでもこれ覚えたら結構楽しいよ」
「それより名前明日の追試は大丈夫か」
「それはやばい。シャルに一晩カテキョ頼むわ」
「シャルも暇じゃないんだぞ」

シャルというのは愛称で、本名はシャルナークというひとつ年下の男の子だ。イケメンで筋肉質で頭もキれるちょういいやつ。クロロと同じ男子寮に住んでる。クロロは今年なんと寮長に任命されて大変みたいなのです。

「勉強なら俺教えるけど?」
「げ、イルミ」
「イルミが勉強を教えるとか今日は雹でも降るな」
「名前は今日ノーパンノーブラなんだから男子寮なんかにホイホイ上がったらだめじゃん」

そう、そうなのです。昨日カルトくんのあれこれがあったので今日は罰ゲームとしてノー下着生活なのです。パンツははいてないけどジャージ着てるから・・・ん・・・まあ・・・

「お前またそんなバカみたいなことを」
「とか言ってクロロってば顔まっか」
「クロロってばなに想像してんのキモ。パクに言いつけてやる。クロロが私の『不埒な姿想像して顔赤くしてますキモ」
「なってない!なっていないぞ俺は断じて!赤くなど!」

ぷぷークロロってば可愛いんだからまったく。

「じゃあこうしよう。名前に練習問題解かせて間違ったら脱衣。脱衣勉強」
「カーディガン、ブラウス、スカート、ジャージ。私のライフ4しかないよね。イルミってほんっとばっかじゃねーの」
「おいおい。俺が名前の勉強手伝ってやろうって言ってるのに、なに、その口のきき方。蓋でもしておかないと駄目なの?上の口と下の口どっちがいいの?」

この男にはなにを言っても無駄である。クロロは赤くなって伸びている。まったくこの男どもときたらぜんぜん駄目である。私はこっそりシャルナークにメールを送信した。

『勉強おせーて』


20120613