小説 | ナノ


この前の試験期間に課題で出されていたレポートをやっていなかった。私の内なるうっかり八兵もとんだ困ったさんであるが、先生も先生だ。この際もう先公で十分だ。あいつめ、私が今日マチたんとサーティーワンの日デートをすることを知った上で「苗字お前この前のレポート今日までな」とか言いやがってチクショ。前もって言えよ。

「前もって試験日に提出って言ってたじゃん。名前ってほんと馬鹿だよね」
「イルミうるさい」

そんなわけで私は図書館で適当にレポートを書いてる。モラウ先生の似顔絵めっちゃ上手く書けたからこのまま提出しよ。そして何故か傍らにイルミというものすごい味方(いや、敵か・・・?)がいる。

「まだ終わんないの?」
「あとちょっと」
「うわ、モラウの顔しか描いてないじゃん。めっちゃ似てる」
「勝手に見てんじゃねえ。ていうかイルミなんで居るの?イルミ図書館とか似合わないウケる」

ギャハハと笑えば図書委員に睨まれる。イルミは普段から大声でしゃべったりましてや笑ったりしないので、不本意ながら図書委員の痛い視線は全て私が頂戴した。嬉しくはない。

「俺は弟観察」
「キモ」
「俺、辞書にキモいっていう項目作って意味に名前って書いてあるよ」
「イルミってまじ私のことラブだよね」
「ここは中等部と共用だから弟がたまに来るんだよ」
「あれ、イルミの弟って高等部に居なかったっけ?目だけイルミに似ててデブってる」
「アレじゃない。うち5人兄弟だから」
「マジで!!!!」

ちょっと興奮してスタンディングオベーション!したら椅子がガタコン倒れたのでまた図書委員に睨まれた。眼鏡の奥の鋭い閃光たまらん怖い。ごめんなさい。

「今度イルミん家遊びに行くわ、ヒソカとクロロ連れて遊びに行くわ、兄弟ガン首揃えて待っててね」
「俺ん家セキュリティ高いから馬鹿は入れないんだよね、ごめんね」
「私もヒソカもクロロも保体だけは毎回100点なんだけど」
「変態も勿論入れないから」

どんどんテンションは高くなりイルミの兄弟を想像しながらノートに書き連ねていく。

「皆男?」
「いや、妹が一人とオカマが一人」
「万国感パねぇ!さすがイルミの弟!今話題のニューハーフかよ!」

イルミとイルミ弟(デブ)は見たことがあるのでサラサラと描き、イルミ弟2はよくわからないので短髪のイルミを描いてみる。イルミ妹はイルミの前髪をパッツンにして睫毛を足して、おお、これ、けっこういい線いってると思う。ニューカマーイルミは、とりあえずイルミを描いて髪の毛はキンパ、Aラインカールにして、あ、リボンつけよ、あとやっぱ睫毛。こんなもんだろ。うおわっふー!やべ!これやべ!ノートの端にイルミ兄弟と書いて完成。よし、これモラウ先生に提出しよ。

「あ、キル」
「げ!兄貴」
「え、なにあれ!あれイルミの弟!?」
「そうだけど」
「全然にてないじゃぁん!」

イルミの弟は私の想像図とはかけ離れてちがかった。目はきゅるるんとしていてフワフワの白髪を蓄えて、なによりきゃわいい。手を振ったらペコリとお辞儀してくれた。うわっかわっ!



20120603