小説 | ナノ


今日は休日ですが、テスト期間前なのでビューティーブレーン八木ちゃんの家でお勉強会です!るん!
インターホンを押せばすぐさま扉が開く。眼鏡の奥のキリリとした瞳がミラクルかっこいいのに、優しく微笑むもんだからたまらん。これだから美人はたまらん。

「八木ちゃん今日も可愛いね!グッ!あ、これお土産。羊羹」
「ありがとう。近所迷惑になるから早く入ってね」
「おじゃましまぁ・・・」

八木ちゃんの綺麗なお家に足を踏み入れると、八木ちゃんに見合わない、おと、お、お、男が!

「・・・す」
「名前どうかした?」
「八木ちゃんこの方はもしかして八木ちゃんの彼氏!?八木ちゃん年下趣味!?え!?ええー」
「弟よ」
「なるほど」

「はじめまして!八木卓人です」

にこっ
シャランラという効果音がついて天平トーンが舞うような可憐な笑顔で自己紹介されました、こちらのタクトくん。しかしまあ似てないな。チラッと八木ちゃんを見てからもう一度タクトくんへと向き直る。やはり、似てないな。

「いやあ、礼儀正しい弟さんで。私は八木ちゃんのクラスメートの苗字名前です。ええと、お土産の羊羹は八木ちゃんに渡したのでどうぞ食べてやってください」
「ありがとうございます!」

にこっ
天使のほほえみや!天使や!しかし、まあ、似ていないな。

「タクトくんは天使のような子だね」
「は?」
「八木ちゃんは女神だけどね!」

八木ちゃんに部屋まで引き摺られて、その日のタクトくんとのコンタクトは終了した。
クラちゃんはちょっと遅れて来た。





「スケット団さーんお邪魔しまーす」

モモカちゃんの握手会の参加券をゲットした私はスイッチくんと今後の予定を決めるべくスケット団部室まで足を運んだ。小田倉くんもチケット取れていれば3人で行く予定なのです。生存戦略なのです。しかしなにやらまたスケット団さんは揉めているみたいで騒がしい。

「あ、名前や」
「今日も騒がしいねー」
「どうしたどうした」
『チケットは取れたか?』
「うんバッチリー」

「なんやスイッチの客か」と言ってヒメコちゃんはお茶を淹れてくれた。ボッスンの方を向けばあれ、なんか、丸まった物体が、しかし、おや、見覚えがある・・・

「もしかして、タクトくん?」

名前を呼べば丸まった物体はビクッと震えおそるおそる顔をあげた。あ、やっぱりタクトくん。

「ひさしぶり」
「お、ひさしぶりです」
「あ、覚えてるかな?何回かお家に伺ったことあるんだけどね、タクトくんのお姉ちゃんの友達だよ!名前だよ!」
「も!もちろん、覚えてますよ!」

この日のタクトくんはちょっとよそよそしくて、スケット団の皆さんはにやにやしていた。

『ニヤニヤニヤニヤ(・∀・)』





「なんやタクト、名前にもいい顔しとんのか」
「いい顔って・・・しょうがないじゃないですか。名前さんは結構前から家に遊びに来てて初対面の時なんか姉さんがいる前で自己紹介をさせられちゃったんですから」
「そういや名前はよく八木ちゃんとクラちゃんと一緒に居るもんな」
「最近はよくわかんねー奴らとつるんでたりするけどな」
『誰のことだそれは』
「オメーだよ」
「姉さんにもですけど、くれぐれも名前さんにもこのことは」
「なんでや。名前は別に八木ちゃんにチクったりするような子じゃあらへんで」
「怒ったり、もしなさそうだしな。名前が怒ってんのみたことねーなそう言えば」
『俺はあるぞ』
「まじか」
『モモカのインストアイベントに並んでいて割り込まれたとき激怒だったな』
「そういうんはもうええわ」
「ともかく、です」

僕は名前さんの前では「天使のようなタクトくん」を貫かねばならないのだ。





「あれ、タクトくん」
「名前さん!今お帰りですか」
「うん。ちょっと漫研に居たら時間くっちゃって」
「名前さんは漫研に所属…」
「してないよ。なんとなく友達の顔を見にねー」
(最近はよくわかんねー奴らとつるんでたりするけどな・・・なるほど)
「タクトくんは部活?」
「そうです。遅いので送っていきますよ」
「え、ええ〜!いいよいいよ!うちそんな遠くないし!タクトくんの方がちっちゃくて可愛くて天使さんだから危ないよ。送っていこうか」
「・・・結構です」
「あ、じゃあ危なくなったら電話してよ。ね!」
「はあ」
「タクトくん赤外線つかえる?スマホって赤外線ないんだっけ?」
「使えます。大丈夫です」
「じゃ・・・はい・・・そうしーん!」
「あの」
「うん?」
「危なくなくても、その、普通に、メールしても、いいですか?」
「ぜんぜんいいよー!じゃあ私もタクトくんにいっぱいメールしよ!うふふ」





「あれやな、タクトめっちゃ名前のこと好きやん。あーもう見てればわかるわあ頬だるんだるんに垂らしとったで。見た?ボッスン見た?」
「痛い痛い肩そんなに叩かないで」
『名前を選ぶとはなかなか目が高いな』
「けっこう競争率高いもんな。八木ちゃんとクラちゃんと3人で並んどるとアイドルユニットみたいでほんまかいらしいしなあ」
『ユニットは2人だがな』
「細かいことはええねん」

「まあ、うまいこといけばいいけどな」



20120530