小説 | ナノ


「名前はこれからどこに?」

「ううん、と。本当はザバン市まで向かおうと思ってたんだけど」

「もしかしてハンター試験かい」

「見学ね。知り合いが受けるみたいなのよ」

でもヒソカさんがいるなら行く必要もないかなあ。お金もあるし。そうそう、お金もあるし。とりあえずお金があればなんとかなる気がしてきた。

「おやおや。それは奇遇だね。僕も受けるんだよ。ハンター試験」

ええ、以外。ピエロが本職じゃないのにこの格好で街中を歩くなんて相当なイカレポンチだわ。となると、やっぱりザバン市に行った方がいいのかしらん。

「ねえ、ザバン市ってどんなところ?都会?」

「まあ、ここよりは拓けたところだとは思うけど」

一緒にいくかい、ニヒルに笑うヒソカさんに私は迷いもせずにイエスと返事をした。
怖いことなんて何もない。何もない。家族も友達も帰る場所も自分の記憶も、何もない。何も怖くなんてない。
ヒソカさんはむんずと私を掴みあげ、飛んだ。今まで体感したことのない速さで風を切り走る。…前言撤回。怖いものはやっぱり怖いみたい。


(知れば知ったで怖いのかもしれない)


20110914