小説 | ナノ


ボロだけど大きなリュック。私が背負っていたリュック。中に入っていたものは、お金(通貨はジェニーらしい)、携帯電話、ゲームのメモリーカードと指輪にナイフ。携帯電話とメモリーカード、指輪にナイフはそんなに幅も取らず、大きなリュックに何をそんなに詰められていたのかと思えばお金だった。

「わお」

「すごい大金だねえ」

「ヒソカさんにも分けてあげようか」

「くくく。こう見えてもお金には困っていないからね。遠慮するよ」

へえ。

「ヒソカさん、イイヒトなのねぇ。見かけによらず」

そう言ってやればおかしそうに笑うピエロはすこし不気味だ。
このゲームのメモリーカードは、私が知っているどのゲームのものでもない。この国の、この世界のオリジナルか、それとも単に私の知っているゲーム機以外のものか。指輪はアンティークみたいでお洒落。はて、売ったらいくらになるのだろうか。ナイフはシンプルにできているが特に使う予定もない。高く売れそうにもないしとりあえず持っていようか。ハムでも切ろう。ケータイ。もしかして、これに、私の個人情報が入っているのでは。いそいそとメニュー画面を開き0ボタンを押す。

「名前、」

メールアドレスも電話番号も入っていない。解約されたものだろうか。電波状況は圏外。そこに写るのはなんだか懐かしい文字。名前。これがきっと私の名前。
私の横で札束を整理するヒソカさん。ねえ、


(私の名前を教えてあげる、)


20110913