「言葉でひとを殺せるのか。前に工藤先生、言ってましたよね」
ギッ。ギッ。ギッ。安いパイプ椅子は煩い。
先生の目は細く笑ったままで返事はない。
「私は死にますね」
ギッ。ギッ。ギッ。
「工藤先生に死ねって言われれば死にます。嫌いって言われても死にます。いらないって言われても、死ねますね」
そうしてようやく工藤先生は私を見てくれた。
「それって脅し?」
「でもだからといって先生と手を繋ぎたいとかキスをしたいとかセックスをしたいとか、そういうことじゃあ、ないんです」
「それは困る」
「困る?」
「じゃあ僕はどこに欲望をぶちまければいい?自分?物?それとも、安い女、とか」
「先生、」
「なぁに」
ギッ。ギッ。ギッ。目の前に広がる工藤先生の顔。ギッ。ギッ。ギッ。先生が古いパイプ椅子から立ち上がる。パイプ椅子に負けないボロさの机を挟んで私の顎を持ち上げる。ギッ。ギッ。ギッ。
「死にそう」
ぶちゅう。
20120409