小説 | ナノ


苗字名前が1日くらい欠席しようが流川楓にはどうとでもないことだった。ちょっと五月蠅いのがいなくなり心地いいくらいだった。桜木花道という男も一日でも休んでくれればそれは静かないい一日になるだろうと思うくらいには清々していた。そんな男は朝早くから公園での自主トレーニングに励んでいた。ダムダムとボールをバウンドさせれば視界の端につやつやとした黒髪が靡いていた。

(苗字……)

時刻は7時前。苗字名前は通学中だった。彼女はビビッドカラーのイヤホンを耳にねじ込み音楽を聞いている。流川には気付かない。流川楓は彼女を確認しても「朝早いな」だとか「家がこっちの方なのか」だとかそんなことは考えずに、まるで何もなかったかのように視線をボールに移した。

流川楓の1日は緩やかに過ぎていった。
授業中に話しかけてくる女は今日は静かで、机の上に屍のように項垂れている。午前中4時間ぶっ通しで寝ていた時は本当に死んでいるのではないかと思った。昼休みから午後にかけて苗字名前は行方不明だった。終業時には帰ってきたが苗字は今日1日発声しなかった。そして颯爽と帰った。
流川楓の1日は緩やかに過ぎていった。



20120406