小説 | ナノ


苗字名前は迷っていた。7時に家を出ていつもの電車に乗ろうと思ったが流川に合わせる顔がないような気がして学校に行くかどうか迷っていた。悩んだ末結局いつもの電車を見送ってしまったが、母親に弁当を作ってもらって家を出た手前なんだか帰りにくい。そこで思ったのだ。そうだ、こんなときは海に行こう。

「2年生なんですね、じゃあ私よりひとつ上ですよ。仙道さんて呼びますね」

「じゃあ俺は名前ちゃんて呼ぼうかな」

「じゃあ私は彰さんて呼びますよぅ」

「あはは」

そうしてサボタージュした苗字とサボタージュした仙道は出会ったのである。

「彰さんは、ええと、学校は?」

「そこにある綾南。部活は行くよ」

「へぇ、海が近くていいですね」

「名前ちゃんは学校は?」

「ううん、電車を乗り間違えて」

「だってこんな海まで来なくても引き返せばいい」

「彰さんは顔の割に意地が悪いですねサディズムってやつですね興奮しませんよマゾヒストじゃあないもので」

「名前ちゃんも顔は良いのに饒舌で辛辣だね」

「ええ、ええ。よく言われます。ゆえに友達もいません」

「え」

「ひとり、ひとりはいたと思ってたんですけれど昨日友達をこじらせてクラスメートになりました」

「・・・そっか。だから海に」

「傷心旅行というやつです」

ざざーん

「釣れませんねぇ。彰さん才能ないんじゃないんですか」

「釣りは根気だよ名前ちゃん」

「友達も根気で作れませんかねえ」

「作れるよ。それは釣りより簡単」

「ウィアリー?」

「はは、ほんとほんと。はい、手ぇ出して」

「はいどうぞ」

ぎゅぎゅ

「これで俺と名前ちゃんは友達。フレンド。アーユーオーケー?」

「・・・彰さんはなかなか気障なことをしますねさては気障部ですか」

「残念。バスケ部」

「バスケ、それはあれですかボールをゴールに入れるあのバスケットボールですか」

「そのバスケットボールで、多分あってるよ」

「私の元友達もバスケ部なんですよ奇遇ですね。バスケットには妙な縁があります」

「・・・それはまた奇遇だねえ」

「今度バスケットボールを教えてください、お弁当あげるので」

「名前ちゃんの手作り?」

「いえ母の手作りです。私のデス料理でよければ作りますよ」

「ありがとう。なんだかこれってカップルみたい」

「そんな関係は御免被ります」

「釣れないな」

「魚ですか」

「どっちも」


20120217