小説 | ナノ



「いいなあいいなあハンター試験の試験管。私もやりたかったなあ。なんでメンチなんだろう。美食ハンターでシングルハンターだったら私でもいいじゃんいいじゃん。ね、メンチもそう思わない?」

外装とは裏腹に煌びやかな内装のレストランテに女特有のキンキンとした声が響いたが客はメンチひとりだった。声の主は店主だった。店主名前は指の腹でパスタの乗った皿をくるりと回してメンチの前に差し出した。

「性格ねー。アンタの性格じゃあ一生試験管の椅子は回ってこないわ」

「えええ、メンチにできるんだから私にだってチャンスはあると思うんだけど」

スプーンの上で綺麗にくるくるとパスタを巻く仕草は普段のメンチからはなかなか思いつかないくらいに綺麗な仕草だった。

「アタシは一応アンタの料理の腕だけは買ってんのよ」

「料理の腕だけは、ね」

「このパスタもどこで食べたものより美味しい」

「私の血と涙と汗と愛情がたっぷりたっぷり入ってますからねー」

名前がドウゾーとワインを差し出す。

「名前の料理食べたら他の料理は暫く食べれないのよねー」

「私も。メンチに料理を出す時が一番幸せ。こんなに喜んでくれる人なかなかいないもの」

「幸せよね」

「うん。ハンターになってよかった」

「って新人にもおいおい思ってほしいのよ」

うんうん、とふたりで頷いてグラスを傾ける。なにに?なんでもいいのよ。しあわせだわ。乾杯。チン、とグラスが鳴り一気にワインを煽った。


20120214

翌年
「メンチメンチ聞いてよ!折角今年のハンター試験の二次試験試験管になったのに二次試験やらなかったんだけど!最悪!」