小説 | ナノ


目を覚ませば顔はひんやりと冷たくああ寒いなと布団に頭を突っ込んだ。それから彼はこんな寒い朝なのだから体調は崩してないか心配になったが、大きな家だ。きっとメイドが世話を焼いているのだろうと再び夢の中へと意識を追いやった。
目を冷ますと幾分部屋の中は暖まっていた。ベッドサイドに投げ出されたCギアを手繰りよせれば時刻は正午過ぎだと表示されていたが今日は休日なのでなんの問題もない。そうだ。ランチを食べてから昨日消費してしまったジュエルを採りに行こう。場所は、そうだなあ、でんきいしのほらあながいい。
部屋の鍵をかけてからエレベーターを降りエントランスに出るとちょうどノボリさんが自動ドアを抜けてきたところだった。

「どうしたんですか」
「困ったことにクダリの忘れ物です」
「それはお疲れさまです」
「名前さんは如何なされましたか」
「今日はお暇をいただいてます」
「なるほど。どうりでいつものメイド服ではないわけですね」
「あれはあそこでのキャラクターですよ」

私はバトルサブウェイで働いている。つまりここは社宅となるマンションでつまりノボリさんは私の上司にあたる。つまり。私は普段はスーパーダブルトレインに乗っているが人手が足りなくなった場合は渋々マルチバトルもするしシングルバトルもする。メイド服を翻して。彼に告げたとおりメイドというのはそこ、サブウェイでのキャラクターであり「いらっしゃいませご主人様」というバトル前の文句を考えたのは直属の上司であるクダリさんであるが彼よりもノボリさんの方が話しやすい。
上司にペコリと頭を下げてから自動ドアを抜けるとライモンシティに雪は積もらぬどもやはり外は寒かった。起き抜けなのでそんなヘヴィなものは食べれないし、ああ、そういえば昼時になればジムの向かいにサンドウィッチの屋台が現れることを思い出した。ホットコーヒーとアボガドのベーグルにしようと東に足を進めた。このときの私にファミレスなどでヘヴィなものを食べた方が良かったのではと助言してくれる人はいない。ジムの横の大観覧車、どんなタイミングの良さだと突っ込もうにも私がベーグルを買って振り向けばなにやら帽子からぶわりとボリュームのあるポニーテールをゆらした可愛い、本当にナチュラルな可愛さを纏った女の子が他の何者でもない私の恋人であるフユタと観覧車に乗り込んだところが視界に入った。私は何も見なかったことにしてでんきいしのほらあなに向かった。


next..?
20111204