小説 | ナノ


天空闘技場の2階フロア(もはや天空とか言わないレヴェル)で1日平均3試合、少なくて2試合、多くて4試合組まれる。私の場合、だが。「名前様、2階A闘技場までお越しください」。私は重い腰を上げ闘技場に向かう。

拳が飛んでくる。
ううん。50戦を越えたあたりからどうにか避けれるようにはなってきたんだけどやっぱり1撃を決めるのが難しい。女の私だとリーチで不利だ。足を伸ばそうものなら足首を掴まれ地面に叩きつけられる。パンチを突き出せば首根っこを掴まれ地面に叩きつけられる。くそっ!その手もパンチの軌道も足の動きもなんなら脈の動きだって見えるのに!悔しいったらない。私は96回目の敗北と地面を味わった。

「あー…名前です。何回報告しても心苦しいのですが、ええ、ええ、そうです今日も3連敗です。はい。じゃあ」

元から持っていたケータイではなく新しく新調したケータイ電話でモラウさんに今日の結果を報告する。日課だ。ノヴさんは嫌味と罵声ばかり浴びせるから苦手。「200階に到達したら次の修行に入るからそれまで帰ってくるなよ。ただし200階に到達したらさっさと帰ってこい」。こんな私にも帰る場所ができたわけだけど、帰りたくても帰れないのはつらい。

「モラウさーん!早く帰りたいですよー!ついでにノヴさーん!」



(97度目の正直)


20111023