小説 | ナノ



「あれ、カイトさんじゃないですか」

「おー、名前。久しぶり」

聞いたことのある綺麗なソプラノに振り向けば以前共に仕事をした所謂仕事仲間か、がそこに立っていた。カイトさんが街に居るって物珍しいですねえ、なんて間延びした声をあげる。漆黒のロングヘアーが艶艶となびく。

「そういやあ、おまえ、ちょっとは連絡寄越せよな」

「ええ、カイトさんがくれればいいじゃないですか!私はオールで暇なのでいつでも電話とれますよ!」

あほか。

「俺のケータイに名前の番号登録されてねーから」

そうだ、そうなのだ。仕事の手伝いとか仕事の手伝いとか仕事の手伝いをしてもらおうとアドレス帳を開けども名前の名前はでてこなかった。そういえば名前のケータイに俺の番号を登録して満足したようなもやもやん。

「じゃあほら赤外線しますから、これでいつでもワンコールラブコールですね!」

なんだそりゃと聞けばマイナーな歌の歌詞ですよと返ってきた。「カイトさんおっくれってるー」と言われたので軽く頭をはたいてやった。名前は大袈裟に痛がるが軽口を叩けるくらいの痛みだろう。それよりも俺の手に残る絹を触ったあとのような触感をどうにかして欲しい。再びそれが欲しくてもう一発はたいてみた。ああ、この感触がたまらないんだ。



20111015