小説 | ナノ


「お姉さん、伊角さんの知り合いか何か?」

セレモニーが始まるからお客さんもだいぶ捌け「休憩ー」と相川さんがひっこんでしまったので、私はひとりで受付をしていると会場のドアが開く。茶髪の少年、いや、青年か?このくらいの年齢の男をどう分類すればいいのか私にはわからない。が、彼がなんとも気さくに話しかけてきた。伊角、その言葉にああと納得する。そういえば伊角くんの横に居たのは彼だったかもしれない。

「ああ、あれ、やっぱり伊角くんだったんだ。中学の時に同級だったから似てるなあと思ってたんだけど」

「へえ。中学。伊角さんにも中学時代ってあったんですね」

「そんな取り繕ったような敬語いらないのに」

「あ、そう」

彼は和谷くんというらしい。伊角くんは囲碁のプロになっていて和谷くんも同じらしい。会社が囲碁の大会を主催しようが私はいまいち囲碁というものが分からない。「囲碁っておもしろい?」と聞けば今度教えてやるよと笑った。別にいらないけど、私は喜んだふりをした。


20111011