小説 | ナノ



「会長。どうしたんすか、その女」

がっしりと掴まれ、気がつけばガタイのいい男と眼鏡の男の前に投げ出された。馬鹿にでかいキセルを持ったガタイのいい男は私にぶふぅと煙を吐き出した。目にしみる。やめろ。ぺっぺっ!

「なに。ただのハンター試験の不合格者じゃ。目だけは良いみたいでな」

つれてきた、と言ってのけた。このじじぃ。

「連れてこられました名前です、どうも」

「そんじゃ、わしはハンター試験の見学にでも行ってくるわ」

ええええええ!なんだ、ほんとなんだこのじじぃぶちのめすぞ。そう思ったのは私だけではない。目の前のキセルも眼鏡も「ふざけんじゃねえ」と顔にかいてある。まったくである。

「そのあいだ、名前を鍛えてやってくれんかのう」

いえいえ、結構です。鍛えられても困るだけでしょうに。私もあなたたちも。思う間もなくじいさんは消え去った。ヒソカさん以上のピエロだ。

「あの人の気まぐれにも困ったものですが」

「どうしたもんかねぇ」

ふわふわとキセルをふかしながら揺らぐ煙。それはガタイのいい男の姿になる。ひとり、ふたり、さんにん……。次から次へと煙は男に変わっていく。なんだなんだ。この世界はみんながみんながマジシャンだとでもいうのか。すごい。ざっと30人は誕生したんじゃないかというところでゴトリとキセルが投げ出された。

「さぁて、本物の俺はどーれだ」

何重ものにやりといやらしい笑顔が私を見る。
試験が終わってというものの、私はなんだか試練が与えられてしまったわけであるが神は私がお嫌いか。


(いいえ、愛です)


20110921