小説 | ナノ


深夜2時。携帯から断末魔が聞こえた。

「・・・もしもし」
「あ、名前?合コンしよう合コン」

イルミ専用の着信音がけたたましく鳴り響き、命を捨てるのも惜しいので渋々通話ボタンをプッシュすれば悪魔もとい大王様もとい彼の声が聞こえた。
おもわぬ用件を伝えられ、でた言葉は「はぁ?」だった。うっかり。

「今思いついてさ。ほら、俺思いついたら即行動したい男じゃん?」

しらねーよ。勝手にやってろ。ヒソカとかと。

「俺はテキトーに男2人連れてくから名前は美人2人連れてきてね」
「おい、その男2人はヒソカとクロロじゃないだろうな」
「……ゴトーとミルキにする?」
「お見合いか」

「じゃあこうしよう」

俺が名前の連れてきた女のレベルに合わせて、俺がそのへんで拉致ってきた男の顔を変える。針で。
やめろ。
この男がその奇天烈なことをやってのけるのはわかっている。まじでやる。こいつはそういう男だ。念能力ッテ便利ダナー。

「名前がろくでもない女を連れてきたら名前のせいで俺が拉致ってきた男は細胞の分解に追い付けなくてよくて廃人、悪くて死人、最悪もう人間なのかどうかもわからないモンになっちゃうけど、合コンしようよ」
「それは確実にイルミのせいだしそんなこときかされてなんで合コンしなきゃなんねーのよ」
「最終的に俺と名前しか残らなくなっちゃうね」

・・・わかった。
イルミの言わんとしていることはわかった。

「イルミ今どこに居るの?」
「さあ。どこかな」
「…あーはいはい。いいですからそこ動かないでね」

つまりはそういうこと。普通に言えよって話で。甘えたいならもっと素直に言えよって話で。寂しいんだねって話。


(深夜2時。愛しの彼からのラブコール)


「会いたいなら会いたいって言えよ」

ようよう探し出したイルミは屍の上に立っていた。それから私を見つけると口元だけで笑う。幸福そうに。



20120801