小説 | ナノ


「こんにちは、ゴルゴンです
久々の更新ですがみなさん春を、出会いを大切にしていますか?
私の近所といえば、王子様みたいな男性とお近づきになる機会がありまして‥‥」

パソコン用に買った眼鏡は思いのほかフィットして心地がいい。
俺の趣味はブログだ。書く方じゃなくて、見る方。言うならばロム専。コメントもしないでただただ好きなブログを読んで満足するだけの簡単なお仕事。好きで読んでいるので、まあ、おもしろい。
ここ数年で一番ヒットしているのがレビューサイトのブログ巡りだ。文章の書き方とか癖がいちいち可愛い。苗字さんがブログをやっていたらこんな感じかなあと思うとこころ踊るくらいにツボだ。いや、実際、彼女(ネカマだったらショックだがここはあえて彼女と言わせてもらう)のオススメと書いた本を読んでみれば面白いしカフェに行けば美味しいし、なかなかお世話になっていたりする。
そんな彼女に男の影がチラついたという記事を読んで、内心ふつふつとこみあげるどす黒い感情が生まれた。ぶっちゃけイライラしている。顔も知らない女に顔も知らない男の影が、こんなに俺の中に大きな苛立ちを覚えさせるとは、やりおる。

「大学生協で知り合ったんですけど
髪の毛は明るく染めててちょっとチャラい?感じ?かな?
顔はけっこう甘めで目もおっきくってオーラがキラキラしててやばい!王子様みたい!
でも喋ると結構まじめーで
ギャップ萌え?(笑)
すごく難しそうな参考書とか読んでて
じつは頭もいいのかなーって
なにそれ完璧!みたいな」

おいおいおい。待て。待ってくれ。
大学生協で?知り合って?それってなんて俺。
あらぬ仮定が頭の中で走る。落ち付け俺、とビールの泡を口の中で噛み殺しながらもんもんする。
でも、もしかしたら、もしかして。

「私の画力ではどうもうまく表現できませんがこんな感じ
[画像]
みなさんにも素敵な出会いがありますように☆なんちゃって
次に更新するときまでにはオススメされた小説読み切ってレビュー書きたいなーなんて思ってます
では

ゴルゴン」

似顔絵は壊滅的な抽象画で目と口の区別ができない。そんな似顔絵(もはやこれは人間を描いたものなのか定かではない)なので俺かどうかは判別できないが、もしこのブログが苗字さんのホームだとすれば。やっべ高鳴ってきた俺の鼓動。

「苗字さんにもとうとう春が。゚(゚´Д`゚)゚。」
「王子様の似顔絵wwwイケメンすぎワロタwwwwwwww」
「リア充爆発しろ」
「苗字さんが男でホモカップル成立記事期待age」
「似w顔w絵wwwwww」

コメント欄をまでしっかり読み終え「苗字たんは俺の嫁」とだけだが、珍しくコメントを投稿してベッドにダイブした。うおおおおおお。苗字さんに春がキてますように!俺が春風でありますように!


20120725