小説 | ナノ


※学パロ(イルミシリーズとは異なります)

彼、シャルナークくんを初めて見たのは大学構内の学生生協だった。
私の横に立って本を物色しているその横顔は三次元とは思えないほどに端正なつくりをしていて、たまげた。まじまじ見るのも悪いよなあとチラッと見ては本棚に視線を移しレポートに使えそうな本を選ぶ。図書館の本はほこり臭くて嫌いなのだ。こら、贅沢とか言わない。あのにおいを嗅いだだけで身体にぽつぽつと湿疹が出てくしゃみが止まらなくなる身にもなってみろ。中古の本も飼えないし、中古の本屋に入っただけでやばい。病院に行って薬を貰って、だと結局お金がかかる。しょうがないのだ。上から順番に本棚をなぞっていくと、エッセンシャルセルバイオロジー。お、いいかも。あーんでも原書かー英文訳すのめんどくさいなあ日本語版ないのかなあ。とりあえず気になった本を手に取りパララーとめくれば、うん、いい感じ。でも英文がなーうーんうーんと悩んでいれば「それ、面白かったよ」とイケメン。まじか。イケメンは声までイケメンなのか。

「マジすか」
「まじまじ。俺が持ってるのは訳してある方だけどね」
「あーいいなあ。私あんまり英語得意じゃなくて」
「へーえ。でも読めることは読めるんだ」
「それなりには。あーでも翻訳に費やす時間が惜しい」
「レポートか何か?じゃあ俺の貸そうか」
「え!いいんですか!?」

これはお金も浮くしイケメンとの接点ゲット。なんかわからんがイケメンが餌をまいてる。心意気までイケメン。
それからイケメンとメールアドレスを交換した。名前はシャルナークくん。びっくりすることにサークルが一緒だった。今までなんでこんなイケメンを見逃していたかというと私も彼も幽霊部員だったからである。しかもマンモスサークルで人数だけはやたらめったら多い。活動内容は、ええと、なにか核になるようなものはあった気がするのだが基本的に男女入り乱れてバーベキューをしたりボーリングをしたりカラオケに行ったりだ。友達に誘われ半ば無理やりに足を突っ込んでしまったサークルであるが、半年に一回程度は私も顔を出す。4年間で未だ6回しか顔を出していない。しかし、こんなイケメン君はいただろうか。

出会いといえば春。そう、これは私たちが出会ってしまった春のこと。


20120717