小説 | ナノ



ハンター試験。自分が受けるなんて思ってもいなかった。
一晩明けて、目を覚ますと昨日とは打って変わって人であふれていたがヒソカさんはずっと私の隣にいてくれた。何百人がここに居るんだろう。ゴンたちはもう来たかな。
試験内容も気になるところだけど。筆記だったら即アウト。だってここの字は読めないどころか書けもしない。それはそれでいいか。

「ねえ、ヒソカさん。ハンター試験ってどんなもん?」

「毎年試験内容は違うみたいだからねえ。何とも言えないな」

そもそもなんで私がハンター試験なんて受けないといけないのか。不可抗力だ。45と書かれているプレートを撫でるけど、それはうんともすんとも言ってくれない。
どすん。
人にぶつかってしまった。ギロリと殺気立った視線が私に向けられる。何よ何よ。ぼうっとしていた私も悪いけど、ぶつかっておいてメンチ切ってるんじゃないわよ。

「アーラ不思議。腕が消えちゃった」

「ヒ、ソカ、さん」

ぶつかった相手の腕が切れ落ちていた。いや、落ちてはいない。切れて、なくなった。一瞬。たった一瞬のことだ。「人にぶつかったらあやまらないと」ヒソカさんがそう言ったのだから、きっと犯人はヒソカさん。

「あなた、本当にピエロね」

「吃驚したかい」

「とても。切れ味のいいトランプだこと」

吃驚したのは、人の腕が切れたのに冷静な自分に。それとヒソカさんがあいつの腕を切り落とした「瞬間」が見えたこと。

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

けたたましい音に振り向けば、髭に綺麗なカールのかかった紳士が立っていた。

「ただ今を持って受付け時間を終了いたします。では、これよりハンター試験を開始いたします」


(吃驚したのはお互い様)


20110914