菫姫のお悩み



「……………」


双児の人形の死を司る菫姫、ヴィオレットは鏡を見てしかめっ面をしている。


「ヴィオレット、どうしたのです?」


もう片方の双児の人形、生を司る紫陽花姫、オルタンスが後ろから話し掛ける。ヴィオレットはオルタンスを前髪を触り、さらにしかめっ面をする。

「オルタンス、あなたは前髪に困ったことはありますか?」

「前髪?いいえ、ありませんわ。ヴィオレットは?」

「私は前髪にとても困っています」

前髪を触り、ため息を吐くヴィオレットを見てオルタンスは首を傾げ、理由を聞く。

「何故ですの?」

「私の前髪、横流しになっているでしょう?目にかかるのです。そして痛いの」

「まあ!それは大変だわ!良い物語を見つけても見逃してしまうかもしれませんわ!」

「ええ!ムシューのためにも、それはあってはならないことですわ!ですが、切るのは怖く、心苦しいですし……」

2人は頭を抱え、解決案がないかと考える。少ししてオルタンスが何かを思いつき、ヴィオレットの手を取る。

「ヴィオレット!ムシューに聞きましょう!こういうときのムシューですわ!」

「ムシュー……そうですわね!ムシューは私達が探している間、詠ってくれていますもの!何か解決案を知ってるに違いませんわ!」

では、早速行きましょうと2人は自分のご主人様、イヴェール・ローランの元へ飛び立った。………イヴェールは朝と夜の物語以外、唄など詠っておらず、ファミリーコンピューターに耽っているなど知らずに…



「お久しぶりですわムシュー!」

「美しきもの以来ですわね!」

「やぁ、僕の可愛い双児の人形」

イケメンオーラを出し、2人を抱き締める。2人は頬を染め、イヴェールに抱きつく。少し離れたところには、イヴェールの数少ない友達、ローランサンがイヴェールのファミコンを隠している。イヴェールが2人が来るのを察知し、ローランサンに隠すように指示したのだ。

「ムシュー、今日は聞きたいことがあってきましたの」

「ん、なんだい?」

「(双児姫の前だけイケメンオーラ出しやがって………ニートのくせに!ニートのくせに!)」

ローランサンはイヴェールのファミコンのコントローラのところに油性ペンでニートと大きくかき、満足した笑みを浮かべている。


「ヴィオレットの前髪が長く、困っているのです!」

「常日頃様々な唄を詠っているムシューなら、何か解決案があるのではないかと!」

双児の人形はイヴェールを期待に満ちた瞳で見つめる。

「前髪?…………すまないけど、僕にはそれを解決できない」

「そうですか………」

「残念ですわ………」

「(そりゃそうだ。毎日ファミコンやってるニートが女の子の髪型についてわかるわけないからな)」

双児の人形は落ち込み、ローランサンは鼻で笑う。イヴェールはあ、と何かを思いつき二人に近づく。

「ノエルなら何か解決案持ってるかも」

「ノエル……?」

「誰ですの?」

「君達を作った人形師だよ」

「まあ!私達を!」

「私達のママンにあたる方ですわね!」

「そうだよ。はい、これ。ノエルのとこの地図。さぁ、いっておいで」

「「ウィ、ムシュー」」

双児の人形は地図を貰い、ノエル・マールブランシェのもとへ向かった。


「サン!早くファミコン貸して!」

「ほらよ」

ローランサンは乱暴にファミコンを投げる。イヴェールはファミコンをしっかり受け取り乱暴になげたローランサンに文句を言うが、ローランサンは全く聞いておらず、耳を塞いでいた。








ノエルの家、人形屋のドアが叩かれる。ノエルははーいとドアを開けると双児の姫君を見てまぁと声をあげる。

「あなたがノエル・マールブランシェさんですの?」

「ええ、そう。……あなたたちは、オルタンスとヴィオレット?」

「はい、私達はあなたに作られた人形です」

オルタンスが私達のママンと可愛いらしく笑いヴィオレットもつられて笑う。

「ママンだなんて………いきなり私のもとに来てどうなさったの?」

ノエルは2人を家の中にいれ、丸椅子に2人を座らせ、紅茶を淹て、2人にどうぞと渡し、2人はぺこりと頭を下げる。

「今日ノエルのもとに来たのは頼みがあってきたのです」

ヴィオレットが紅茶を一口飲み、理由を話す。ノエルも丸椅子に座り頼み?と聞き返す。

「はい。ヴィオレットの前髪が長く、目にかかって困るのです」

そう言ってオルタンスはヴィオレットの前髪を触る。ノエルがあら……伸びたのかしら……と不思議そうな声を出す。


「伸びるはずないのだけど…不思議………じゃあ切ってもいいかしら?」

「お願いします、ノエル」

ノエルは席を立ち、物置小屋へ行き、ハサミを持ってきてヴィオレットの前に立った。

「ヴィオレット、目つぶっていてね」

「は、はい………」

ヴィオレットはドキドキしながらオルタンスの手を握り、オルタンスも何故か目をつぶり、手を握り返す。髪の切れる音だけが聞こえる。

「はい、これで大丈夫」

「わぁ!メルシー!ノエル!」

「よかったですね!これで心大きなく物語を探せますわ!」

「ムシューがしっかり歌ってくださってるのだから、私達も物語を探さなくてはいけませんわ!」

前髪の悩みが解決し、双児の人形はきゃっきゃっと喜びはじめる。ノエルは首をかしげ2人に声をかける。

「あなたたちのムシュー、唄を詠ってくださってるの?」

「ええ、詠ってくださってますわ!」

「きっと私達が休んでいるときも詠ってくれているに違いありません!」

イヴェールへの憧れをノエルに語り惚気る2人にノエルは2人が知る由もない事を告げた。

「……私、ローランサンから話聞くけど、イヴェールさん………ずっとファミコンしてるみたいよ?」

「「え………?」」

2人は手を繋いだ儘固まり、ノエルを見つめる。

「嘘か本当かわからないけど、ローランサンがうちにくるたび言っていたわ。イヴェールはニートだ。あんな可愛い人形に働かせて自分はファミコンばっか。詠えよ馬鹿野郎って……」

双児の人形表情を暗くし、少し黙り、同じタイミングでお互い顔を見合わせ確認しにいきましょう!とノエルに礼を言い、急いでイヴェールの元へ向かった。








「ヴィオレット、もし、ノエルが言った通り、ムシューがニートだったらどうします?」

「どうしましょう………嘘だと信じたいですわ」

「けれどローランサンが嘘を吐くなど………」

「ええ、ノエルも嘘を吐くような人ではありませんわ」

2人は話ながらイヴェールの元へ向かう。気配を消して…気配に気付かれれば真実は掴めないと考え、今まで一度も使わなかった行為をした。「……私、ムシューがこの唄詠ったよとか聞いたことないのです」

「私もですわ!何を詠いましたか?と聞いてもまた今度今度と………」

2人は顔を見合せ、ため息をつく、そしてイヴェールの部屋の前に着き、ゆっくりとドアを開けた。

「よし!いけ!倒せ!」

「諦めろって、お前のレベルじゃまだ倒せないよ」

「うるさいよサン!今真剣なんだから!」

「「…………………」」

2人は見てしまった、現実を。見たくない現実を。自分たちが憧れて信じていた主人のニート姿を。2人はムシューと低い声でイヴェールを呼ぶ。

「なんだい、オルタンス、ヴィオレッ………ト!?」

イヴェールは後ろを振り向き、双児の人形がいることに驚きを隠せない。ばれたばれた!とローランサンは腹を抱えて笑っている。

「ムシューは」

「詠っては」

「いなかったのですね」

「私達が」

「必死に」

「物語を」

「探している時に」

「あなたは」

「ファミコンを」

「ずっと」

「やっていたのですね」

「………嗚呼、ファミリーとコンピューターは繰り返す♪煌めくカセットが壊れても♪ほ、ほら!詠ったよ!」

「ムシュー」

「覚悟」

「「してくださいね?」」

「うっ…………!」





双児の人形が笑った後、その部屋にイヴェールの悲鳴が数分響いていたそうな………






Ende






――――――――――
久々の更新、でもないね!結構前から書いてたやつ!色々謎ですよねはい
正直、微妙……←
いつもより低クオリティなのは百も承知です!ゆ、許してください(´;ω;`)物語組大好きです、3人可愛いよー!(と言って終わらせます←)

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