とある箱の中で続



 探の親友、真部憲章は変わった。

「真部くんてさ、すごいよね…」

「―は? 憲章?」

 休日で賑わうジャンクフード店にて、瑛里は脈絡もなくそう零した。
 既に何回目かとなったデート中の出来事である。
 探にとっての至福の時間に、ずけずけと入り込んで

「だってさ、あんなに堂々と…その」

 「アニメのこと言ってる」。―確かにそうだった。
 最近の憲章はおかしい。外見と気質はそのままだが、狂っていた。
 そもそもの発端は探が不本意にも見せてしまった萌え系アニメが原因だ。あれからすっかりとそっち方面の世界に興味を示してしまったらしい。
 恥ずかしげもなくレンタルしてくるし、この前は秋葉原に行ってきたとも言っていた。
 しかしすごいのは、それを一切周りに隠していないということだ。
 むしろ薦めていたりする。

「ん。まぁ、な…」

 俺にも真似できないかもしれないな。

 自分がアニメだなんて、似合わないにも程がある。
 憲章の場合、一部引いている女子はいるが、男子と概ねの女子はネタとして大笑いしていた。

「俺、自分が恥ずかしいや。そういう趣味ってバレたくなくて、こんな、髪染めたりとか…なんか格好悪いよね。小賢しいっていうか」

「いや! その髪色は似合ってるし!」

 俺の馬鹿! 論点はそこじゃねぇ!

「って、ちがくて。いや、あれはアイツのキャラみてぇなのもあると思う。若干ネタにしてわらかしてるかんじだろ?」

 憲章にそんな意図はないと探にもわかっていた。本人は至って真面目に萌え系アニメの素晴らしさをクラスメイトに解いている。ただそれが、一般には不良といえなくもない容貌の憲章が言うと、ギャップがありすぎて可笑しいのだと思う。
 自分がやっていたら…きっとまた違った印象だろう。あ、純粋にアニメ好きなんですね。みたいなカンジだろうか。

「うーん。そうなのかな? ちゃんとストーリーとかも理解してるみたいだし、決め台詞もいつも間違ってないから本当に好きなんだと思ってたんだけど…。そうだったら嬉しいな。一回話してみたいんだ、俺。」

 危機だ!瑛里が憲章に好感を抱いている!!

「でもやっぱ無理かな…。真部くんは格好良いと思うけど、


「いいから!カラオケ行こう!早く!」

「う、うん。そうだね」


◆ ◆ ◆


 佐伯くんとのカラオケは楽しかった。
 自分が好きだと言った曲のアニメまで見てくれたらしい。











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