代わり

以前、『黒騎士ロイド同盟』に寄稿したSSの転載です。
こちらにもUPすることにしました。

※CP:ロイルル
※R1(STAGE24・25放送前)に書き上げました。
※ロイドの追憶です。ルルーシュ未登場。
※黒騎士ロイドではなく、黒騎士“候補”ロイドです。
※シュナ様が白です。…原作でも白でいて欲しかった…|||OTL

*

代わり






  ロイドにとって、ランスロットは“代わり”だった。

  “彼”の代わりに知識を、“彼”の代わりに情熱を、“彼”の代わりに愛情を注いだ。
  彼が敬愛し、情愛する(あるじ)の代わりに。

――― 7年前、亡くしてしまった主の……。





  ロイドの主との出逢いは、彼にとって運命だった。
  主の総てに魅入られた ――― とでも言えばいいのか…。

  ロイドにとって、主は全てにおいても完璧だった。
  その美しい漆黒の髪だとか、吸い込まれそうな程に深い紫眼の瞳だとか、美しい相貌だとか。
  毅然とした態度だとか、外見には似合わぬ大人顔負けな思考だとか、何よりも自らの母と妹を愛する心だとか…。
  でも例え、それらが失われてしまったとしても、ロイドの“彼”への想いは変わらなかっただろう。
  “彼”が主たり得るのは、“彼”という魂が“彼”としてあるからで。
  ロイドにとって、“彼”と言う魂がある限り、彼の主であることは変わらない。

  そして、“彼”はロイドにとって、総てだった。
  ロイドの興味・関心はすべて主に向いていたし、何かあればすぐに主の許へ駆けつけて。
  面倒だと思っていても、主の為とあらば身体を鍛えたし、主の役に立てるならと様々なジャンルの勉強もした。
  仮に、もしロイドが初恋を問われるならば、「“彼”だったのかも知れない」と答えるぐらいに、ロイドの心は“彼”へと向かっていたのだ。

  …そう、主が例えすでに亡くなっていても、ずっと……。

――― だから。

  “彼”を亡くしたロイドは、総てをなくした。
  “彼”を無くしたロイドは、周り総てへの関心が無くなった。
  “彼”を失くしたロイドは、生きる意志すらも…失くしてしまった ―――――。





  “彼”(すべて)を失ったロイドに、新たなる関心の対象を見出させたのは、“彼”の異母兄であり、彼の友人兼幼馴染でもあるシュナイゼルだった。


「あの子の“代わり”を造らないか?」

「…“代わり”? あの方の?」


  シュナイゼルの言葉に、ロイドはシュナイゼルを睨みつける。
  …馬鹿にしたように。

  だが、シュナイゼルは“ロイド”と言う存在を理解していた。
  理解(わか)っていて、提案を持ちかけている。
  伊達に、20年も友人を続けてなどいない。


「そう。お前にとって今、あの子の“変わり”になるものなんて無いだろう?」

「当然でしょ? …誰だって、あの方の代わりになんてなれないし、なれる筈もない」

「…だから、お前自身の手で造ってみないか、と訊いたんだよ」


  ロイドの博識さを知っていたシュナイゼルは、ロイドに次世代ナイトメアフレームの話を持ち掛けた。
  元々ロイドも、“彼”の母親がナイトメアに乗っていたからナイトメアの知識を持っている。
  もし、母親が乗ったというナイトフレームのことを“彼”に尋ねられたら、きちんと答えられる様に……。


「…言っておくけど、僕、ナイトメアは専門じゃないからね」

「当たり前だ。それは基本から勉強をし直して貰う。…だが、あの子は無駄が嫌いだっただろう?
  お前の才能を“無駄”にしていたら、あの子は怒るんじゃないのか?」

  それに、あの子がもし、そんなお前を見たら…悲しむだろう……?


  シュナイゼルの言葉に、ロイドは顔をクシャリと歪める。


「…そんなこと、僕が一番わかってるに決まってるでしょ…?」


  ロイドは、“彼”を亡くしてから初めて、他人(ひと)にその涙を見せた ―――――。





  それから7年……。
  ロイドは、次世代ナイトメアフレーム“ランスロット”の開発責任者として、日本へと訪れた。
  それは、現在は彼の上司でもあるシュナイゼルが、ロイドの心を汲んで命じたのだ。

  …“彼”の、最後の地へと………。


  そして彼は、運命と再会する ―――――。
*