01「騎士の誓い」
それは、彼の君が幼い頃からの誓い ―――。
騎士の誓い
『ルルーシュ殿下。僕はまだ殿下の騎士としては力不足ですが、殿下が成長召されて、僕で良いと仰られるならば…僕を、殿下の騎士にして下さい』
ルルーシュは、来客として訪れているロイド・アスプルンドを待たせていた庭園の東屋へと赴いた途端、ロイドに跪かれ、先の言葉を言われた。
兄の使いか何かだと思っていたルルーシュは、想定外のことに思わず固まる。
だが、自分の言葉を跪いたまま待つロイドに、固まっている場合ではないと、何とか言葉を紡ぎ出す。
『…僕は第11皇子で、継承権も17位。しかも母は庶出の后妃。そんな僕よりも、貴方の友人でもある第2皇子で継承権も2位のシュナイゼル兄上の騎士になった方が良いのではないのですか?』
『確かに、シュナイゼル殿下の方が、ルルーシュ殿下よりも皇位も継承権も母君の地位も高い。…ですが、僕が騎士になりたいと思ったのは、願ったのはルルーシュ殿下ただお一人です。僕にとって、皇位も継承権も関係ない。…殿下が、殿下でいらっしゃらなくても、僕は殿下の騎士を望んだでしょう』
“自分は身分が低いから、そんな自分の騎士になんてならない方がいい”と、それよりも身分は遙かに高く、将来的にも有望で能力も高いシュナイゼルについた方が良いと、他の皇族を…しかも、ロイド自身も親しくしているシュナイゼルを薦めたのに、それを理解していてもルルーシュが良いと言うロイドに、ルルーシュは予想外に動揺し、声が震える。
だって、ロイド自身も有望で、自分なんかの騎士になったら彼の将来を台無しにしてしまう ――― !
『…なぜ、僕なんかにそんな……』
『殿下が今後、皇位や継承権を落とされようとも、例え失くされたとしても。…僕は、殿下の騎士を望み続けます』
僕は、殿下のその優しい心に、何よりも心惹かれたのですから…。
それまで真剣な表情だったロイドが、フワリと微笑んだ。
それは、ルルーシュに向けられたロイドの心。
その微笑みを見たルルーシュの鼓動が、大きくドキリと跳ねる。
『…っ、な、なら僕にお前を認めさせて見せろ! お前が、真実僕に仕えたいと言うのなら、それを僕に示せ。そうしたら……認めてやる』
ルルーシュは赤くなった己の頬を隠すかのように、粗暴に我が儘に言い放ってそっぽ向いた。
だが、頬は隠せても、自分では見ることが出来ない耳が、赤くなっていることまでは隠せない。
ルルーシュの言に、思わずきょとんと見てしまったロイドが、そんなルルーシュに口元を綻ばせた。
『…はい、必ずや。殿下に認めてもらい、殿下の騎士になってみせましょう』
それは、アリエスの離宮の庭園での誓い。
当事者であるルルーシュと、ロイドだけしか知らない誓い。
美しい花々に囲まれていたかの皇子は、例えようがない程に麗しかった。
――― まさか、その数日後にあんな悲劇が起こるなんて…。
そして、ルルーシュがナナリーと共に日本へ送られる事になろうとは、誰にも予想出来なかった ―――――。
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