TURN25派生(6)

「ジェレミア。V.V.のコードを持っていたシャルルが消滅した後、そのコードはどうなったか知っているか?」

「…いや」


  C.C.に問われ、ジェレミアは頭を振り、口数少なく答えた。
  今、目の前にある光景に、己が口を挟むことはおこがましく感じられたから。


「…極まれにだが、コードを継承せずに消滅する者もいる。勿論、それにはギアスが関係している筈だ。
  ギアスが関わらないと、私のようにコードの保持者は消えることが出来ないのだから」


  C.C.はその昔、己にギアスを与えたシスターを思い出した。
  彼女も、永遠に死ねぬ地獄から開放されようと、自分にギアスを与えたのだ。
  …自分がルルーシュと契約を交わしたように。


「そして、保持者がいなくなったコードは、この継承の間に移動し、継承されるのを待っている」

  新たな主、コードを継承する者が訪れるのを………。


「ルルーシュ、お前は怒るだろうな。何しろ、お前の“ゼロレクイエム”はお前の死が必須条件だったのだから。
  …だが、お前は私との契約を果たしていない。契約不履行なのだから、文句は聞かない。まぁ、元から聞くつもりもないがな。
  それに……私は、“約束”は守るぞ?」

  もう2度と、お前を独りにさせはしない ―――――。














  ゼロによる、神聖ブリタニア帝国第99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの暗殺事件から1年が経過した。

  世界は、ルルーシュの死によって平和が訪れた。
  多少の小競り合いやいさかいはあるものの、平和なのは間違いではなくて。
  ルルーシュがその身をもってもたらした平和を、人々はそうと知らずに甘受している。

  ルルーシュに“体力バカ”と言われていたスザクは、幾度となく冷や汗をかきながらも、なんとかゼロとしてやっていた。(その際、シュナイゼルに助けてもらったり、神楽耶にバカにされながらも助言してもらっていたりする)
  ナナリーはそんなスザクと共に、シュナイゼルに手伝ってもらいながら施政を行なっている。
  扇は合衆国日本の首相となり、バーテンダーとなった玉城を内心で『お前は政治家になりたいんじゃなかったのか!?』と恨みながらも、天皇である神楽耶や日本人からの様々な苦情に頭を悩ませている。

  C.C.は、ルルーシュの作った世界を見て回ろうと、旅をしている。
  荷車に乗って横になり、のんびりとした旅を満喫していた。
  そして、旅は道連れと言うだろう?と、C.C.に強引に連れまわされている少年が一人…。


「おい、そろそろオレンジのところに着くぞ」

「ん…あぁ、わかった…」


  その少年は、欠伸をかみ殺して目元をコシコシ擦りながら、C.C.に返事をした。
  その様子はあまりにも微笑ましく、C.C.は思わず小さく笑ってしまう。


「…眠そうだな」

「眠い。…なぜか知らんが眠い」

「そうだろうな。…コード継承したら、しばらくの間は睡魔が激しいんだ。そうだな…あと半年もしたら取れるんじゃないか?」


  C.C.は、少年の言葉に自分がコードを継承した当時を思い出しながら、仕方がないだろうとため息をつく。
  だが、C.C.の返答に聞き捨てならないと反応したのは少年である。


「…ちょっと待て。それまでずっと、こんな睡魔と闘わないといけないのか?」

「あぁ。ちなみに、V.V.の奴は本当に寝続けていたぞ。…まぁ、お前の場合は私が暇になるから起こしてやる。感謝しろ」


  尊大に言って、ニヤリと笑うC.C.に、思わず引きつりそうになる顔をしかめ、少年 ―― ルルーシュはため息をついた。
  その顔には、様々な苦悩が浮かんでいる。


「…聞いてないぞ、そんな話は」

「言っていないからな。…まぁ、コードを正式に継承するには、コードを授かってから1度死なないといけないからな。おそらくは、死んで生き返る反動だろう」


  あっさりと言うC.C.を恨みがましく睨みながらも、再び欠伸を咬み殺す。
  あと半年もこの睡魔が続くのだと思うと、別の意味で気鬱になりそうだ。

  瞑りそうになる目蓋を押し上げ、ルルーシュは長閑な風景をのんびりと眺める。


――― 世界は、平和だ。





(…いっそのこと、ジェレミアのところで睡魔が来なくなるまで寝るか?)

(いいんじゃないのか? 私はオレンジのところでしばらくのんびりしようと思っていたしな)

(…お前がいたら、暇だと起こされそうなんだが)

(よくわかったな。その通りだ)

(………)



...End



*
| 13/35 |
[▼しおり/▲↑]