06「成長」

「ご無事で何よりです、殿下……!」


  ロイドは泣きそうな表情でルルーシュの前に跪き、片腕にすがりついた。
  誰よりも、何よりも大切な存在に再び出会えたこと ――― それが嬉しくて、感謝を込めてルルーシュの手の甲に額をつける。

  それは、騎士が示す最上の敬意と、喜びを示す行動。


「な…ろ、ロイド…?」


  てっきり、己を捕まえようとするか、あるいは……と考えていただけに、ロイドの思わぬ行動に動揺する。


「ずっと、信じてました…殿下が、生きていらっしゃると…!!」


  そう言って、顔を上げて微笑んだロイドの頬には、喜びの涙が溢れていた ―――――。





成長






  ルルーシュの手を引いて、人気が無い場所を求めて歩いていたロイドは、熱く高鳴るその胸の内を、表に出さないように必死で普段のポーカーフェイスを貫いていた。


  今すぐに、存在を確認するように抱き締めたい。

  でも、殿下の迷惑になることはしたくない。


  その、相反する思いを胸に秘めながら、ようやく見つけた人気のない公園。
  そして、改めて向き合ってみれば……ロイドに、衝動を抑えることは出来なかった。
  出来たのは ―― 抱き締めようとするのを、跪いてその腕に縋りつくことへと変換すること。


  殿下(ルルーシュ)が、生きている。

  自分の目の前に、存在している。


  亡くなったと伝えられてから7年、信じないと頑なに思いながらも、半分諦めかけていたのも、また事実。
  でも、こうして再び出会うことが出来た。
  そのことを、ロイドはすべてのものに感謝を捧げたいと思う。


「ずっと、信じて(願って)ました…殿下が、生きていらっしゃると…!!」


  頬を、熱いものが流れるのが分かる。
  だが、ロイドには目の前の人を、そのすべてを感じる方が優先すべき事だった。

  眼をルルーシュに向け、その姿を捉える。
  最後の時から再会の時の違いを、じっくりと見比べるように。


「…お美しくなられましたね、殿下」

「…そこは“美しく”ではなく、“凛々しく”とか、せめて“成長した”とかでは無いのか?」


  突然のことに驚いて固まっていたものの、さすがに思考が戻って来る。
  自分が生きていることを信じてくれていたのも事実のようなので、ロイドのするがままにさせていたルルーシュだったが、ロイドの感嘆の呟きに思わず突っ込んでしまった。
  だが、ルルーシュは間違っていないと主張する。
  普通、男が言われて嬉しい言葉ではない。

――― が、ルルーシュが美しいことは誰にも否定できない事実なので、ロイドは訂正しなかった。
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