むわぁっと生ぬるい魔界の風が吹く。


「本当にいくのね」
「あぁ、もう決めたことだ」


「そう・・・もう会えないのね」
「・・・・・・」


黙り込んだまま答えない、罪な人。
わかりきったことだというのに。

私の夫、ネウロは魔界の酸素より、地上の食を選んだのだ。
そしていま魔界の扉を無理矢理にこじ開け地上へと出ようとしている。


「メサイヤ・・・別れは言わない」
「えぇ、私も」



私も扉へと近づき、愛しい男の顔をそっと手を添えて唇を近づける。
これは呪いよ。
私を忘れられなくて、会いたくなって、戻ってきたくなる呪い。



「愛してる」
「我輩も」




そして貴方は不敵に口が裂けるほど口角を吊り上げ微笑み、こじ開けた穴へと消えていった。





(いつか私が必要となる時がくるわ)
(その日まで、その時まで暫しのサヨナラよ)


お題元:縁繋

Je t'embrasse ―旅立つ貴方へのキス



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